りっくさんの映画レビュー・感想・評価

りっく

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ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー(2023年製作の映画)

3.4

殺し屋の座席を賭けたバディ対バディの対決ものというシンプルな物語は前作よりエンタメ性を増しており、やはり切れ味鋭いアクションの数々や身体のキレは見ているだけで気持ちが良いものがある。

ただ、銀行強盗
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TITANE/チタン(2021年製作の映画)

3.5

男なしで子供を産みたいという単性生殖の願望のドラマ。初老の男性の息子として新たな生を生きはじめる奇妙な共生関係からは、男はいらないが父親は欲しいという欲望が投影される。

ジェンダーを超越した異様な光
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少女は卒業しない(2023年製作の映画)

4.3

廃校が決定している高校での卒業式の前日と当日の2日間を描いた本作は、少女たちを群像劇的に描きながらも、キャラクターの誰もが解像度高く、繊細な心情を掬い取ってみせる。

特に恋人を失った河合優実の卒業式
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顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)

3.7

出会う人々の顔、村々の表情。そこから無限の人間と世界の多様性が拡がる。もはやヴァルダの映画に虚構の物語は必要ない。カメラを向けた先に、人間と世界の過去と現在と未来が重なり合って映し出される。

また撮
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わたしは最悪。(2021年製作の映画)

3.8

本作は人生の有限性について描いている。自由とも身勝手とも無計画とも見える主人公の、三十路を迎えるまでの岐路の数々。その瞬間では自分の感情の赴くままに動き、現代社会に鬱屈を抱えているからこそ、その規範か>>続きを読む

テルマ(2017年製作の映画)

3.5

北欧の寒々しさ満点の本作は、超能力を持った少女というオカルトホラー的な主人公を中心に据えながらも、彼女の内面を光の点滅といったような外的ショック、あるいは医学的科学的遺伝子学的に解剖しようと試みつつ、>>続きを読む

土を喰らう十二ヵ月(2022年製作の映画)

3.7

人生というのは生から死への時間の移ろいである。ただ、その時間の移ろいには、日が沈んでまた日が昇る一日、春夏秋冬と季節が移ろう一年という周期があり、だからこそ毎日を積み重ねることで、自分も含めた生きとし>>続きを読む

戦争と女の顔(2019年製作の映画)

4.1

戦争の描写を直接見せることなく、ある姉妹のミニマムな物語から、戦争が人間の心身に刻み込まれ蝕んていく生々しさを人間の生理と映画的な技巧を駆使して描いてみせる。

ペンキや衣装の印象的な緑と赤の使い方、
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ホームワーク(1989年製作の映画)

3.5

「友だちのうちはどこ?」で子どもの周囲にいる大人たちの抑圧的で家父長的な態度に疑念を抱いた身としては、その問題を子どもたちに課せられる宿題という観点から親や先生といった大人や教育システムへの疑念をドキ>>続きを読む

そして人生はつづく(1992年製作の映画)

4.0

前作「友だちのうちはどこ?」は終始嘘をつかない少年のロードムービーだったが、本作は冒頭より嘘をつくことで切り拓かれていくロードムービーになっているのが面白い。

そもそも映画自体が嘘をつく媒体であるこ
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ゴジラxコング 新たなる帝国(2024年製作の映画)

3.8

東宝チャンピオンまつりの精神を受け継ぎ、ビッグバジェットで怪獣大乱闘を実現させてみせた快作。世界各所に怪獣が出現して最終的に拳を相交える展開は「怪獣総進撃」に近いが、様々な世界のレイヤーでそれぞれの物>>続きを読む

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

4.2

ジグザグ道を歩く少年の彷徨を通して、イランの風景やそこに生きる人々の生活や息吹までも魅力的に伝わってくる。子どもたちの素朴な演技も自然で愛らしく、まともに取り合ってくれない大人を見つめる瞳は不憫でもあ>>続きを読む

アイの歌声を聴かせて(2021年製作の映画)

4.2

複数のジャンル映画的な要素を組み合わせながらも、アイというキャラクターの健気さとロボット三原則をベースにした狂気や暴走、AIが日常に組み込まれた近未来の生活様式と田舎の風景といった相反するものをきちん>>続きを読む

マルセル 靴をはいた小さな貝(2021年製作の映画)

3.6

マルセルという貝のキャラクターを主人公に据えたミニマムな世界からの冒険譚のような物語だと思いきや、彼を一貫して「被写体」として描くことで、彼を好奇な目で見るメディアやSNSといった現代社会とファンタジ>>続きを読む

わたしの見ている世界が全て(2022年製作の映画)

4.1

自らが成長・挑戦できる環境下で成果を出して周囲に認められれば幸せ。そんな確固たる価値観を持っているがゆえに、相手の気持ちに寄り添うことなく、不必要な人間を見下し切り捨てようとする女性が、根本的な性格は>>続きを読む

麻希のいる世界(2022年製作の映画)

3.7

基本的には高校生の三角関係と彼らの親までの狭い射程で物語は展開する。その中の人間同士の関係性や、彼らと社会や外部との関わり合いは、常に緊張感が漲っている。それを塩田明彦は的確なカットの積み重ねによって>>続きを読む

黄龍の村(2021年製作の映画)

3.2

リア充の陽キャが山奥で惨殺されるアメリカ産ホラーと、禍々しい田舎の因習に巻き込まれる国産ホラーを混ぜ合わせた前半から坂元監督お得意の身体能力の高い俳優を生かした陰キャ覚醒のリベンジアクションへと変貌を>>続きを読む

劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室(2023年製作の映画)

3.8

序盤の30分でドラマ未見の一見さんにもキャラクターと世界観の最低限の情報は伝えつつ、横浜の高層ビル火災にその他のすべての尺を注ぎ込んだ潔のよい作りに好感が持てる。

まるで「タワーリング・インフェルノ
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アナログ(2023年製作の映画)

3.8

店に電話すればいいじゃんと何度も思ったが、特にコロナ禍を経て人と人との距離や関わりが見直される中、本作で描かれるものを信じたくなるだけの真摯さがある。

自分の大事なものや場所や時間を自己完結させるの
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終身犯(1962年製作の映画)

4.2

終身犯が牢獄でカナリアのブリーダーになる意外な展開に驚くが、天才的な頭脳を牢獄に閉じ込めていることを世間に知られるのを恐れる刑務所長、息子をずっと牢獄に閉じ込めることで監視独占したい母親など、物理的精>>続きを読む

ジャン・ルノワールのトニ(1935年製作の映画)

3.4

フランスにやって来るイタリア人の出稼ぎ労働の実態を題材にし、人種のるつぼと化す環境下でのメロドラマと、愛する女性の罪を背負って静かに死んでいく男の生き様が、過度にセンチメンタルでヒロイックに描かれるの>>続きを読む

大いなる幻影(1937年製作の映画)

4.2

収容所というステージに、国籍や人種を超えて邂逅する人間と人間。貴族出身であるところから会話が弾み、友情に結ばれていく大尉と捕虜収容所長。そして没落する階級を認識する彼らの犠牲によって、労働者階級出身の>>続きを読む

にんじん(1932年製作の映画)

4.2

無口なゆえに冷え切った家庭を作った父親にも非があるように見えるが、最終的に母親ひとりに幼い息子の自殺未遂の原因があり、そんな母親は嫌な奴という共通認識により父と息子が連帯する着地は男性目線での物語だと>>続きを読む

カード・カウンター(2021年製作の映画)

4.0

ギャンブラーでありながらも、勝ち負けの快楽に身を浸すことも、身を堕とすこともなく、かといってプロフェッショナリズムを感じるわけでもなく、ただ無気力で同じルーティーンを繰り返すジェイソン・アイザックス演>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.4

何重もの入れ子構造になっている複雑難儀な一作だが、いつものウェス・アンダーソン作品よりも俳優の演技の自由度は高い印象を受ける。正面や真横からの絵画的なキメ画は相変わらず炸裂するものの、駒のように俳優を>>続きを読む

処刑人(1999年製作の映画)

3.5

電波系無差別殺人や掟破りの構成、強引すぎる展開などありつつも、ワイルドなパワーと面白さ、やんちゃな美形兄弟の色気とカッコよさ、そして何と言ってもウィレム・デフォー演じるエフビーアイ特別捜査官の変態的な>>続きを読む

真珠の耳飾りの少女(2003年製作の映画)

3.7

スカーレット・ヨハンソンが「真珠の耳飾りの少女」としてキャンバスに固定化されたとき。あるいは妻に言い寄られたフェルメールが描いていた「真珠の耳飾りの少女」を見せようとして、そこにスカーレット・ヨハンソ>>続きを読む

SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)

3.8

90分という尺のうえに章立ての構成になっており、物語も人間ドラマや台詞を極力まで削ぎ落とし、シチュエーションにバリエーションをつけながら不死身の男とナチスとの攻防に焦点を絞ることで非常に見やすい娯楽作>>続きを読む

望郷(1937年製作の映画)

3.6

アルジェのカスバの街並みが素晴らしい。高低差のある狭く複雑に入り組んだ無数の路地に、所狭しと建ち並ぶ建物の数々。そこで生きる人間たちが息づく営みと、その営みに紛れて息をひそめるお尋ね者。部下や仲間に囲>>続きを読む

1秒先の彼(2023年製作の映画)

3.2

人よりも先に行動してしまう男性と、人よりも遅れて行動してしまう女性が、ある数日の出来事をそれぞれの視点から物語ることで観客は互いの接点や想いを知り、そして時を経て印象的な名前を呼ぶ=互いの正体を認識す>>続きを読む

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