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PERFECT DAYSのA8のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
変わり映えのない一日、いつもの一日、つまらない一日、早く過ぎればいいのにとさえ思ってしまう、、。

この男は違った。ただ何でもない一日がとても愛おしく、美しく見えたのだ。
起きてから仕事に行く準備をして、車を走らせ、いつもの場所で働いて、、それがずっと続くのだが、なぜか男は輝いていた。そして、同時に彼を映し出す朝日、小説、ほうきではわく音、東京、、、それらも連鎖するように。

自分の仕事に、生き方に絶対的な誇りを持っているのだろうか、自信を持っているのだろうか、はたまた他の感情が彼の1日を突き動かしているのかは定かではない。だけどそういった類のモノであるに違いない。
トイレの清掃員、、彼の素手でゴミを拾う姿に誇りと彼の人生の深みが浮き出ているように思えた。
そして、特に大きな展開がないからこそ、この作品の“人生”を“生きる”そういった類のリアルさをダイレクトに感じることができた。
また、彼の過去は結局描かれないところも尚よかった。

どんな仕事でも、どんな生き方でも、どんな人間でも“自分の世界”の中で生きている。同じこの広い世界の中で違う人生を生きているのだ。その人生に交わることはできても同じ世界では生きることはできないのかもしれない。名誉、名声、お金、結婚、パートナー、子ども、、、。それはあくまでも“ひとつの幸せ”そういった“モノ”だけを追いかけていたら肝心な“自分の世界”を失ってしまうのかもしれない。大事なのは自分にあった生き方つまり“自分の世界”を生きることである。これができればどれだけ美しく、愛おしいモノになるだろうか。
彼の表情、行動、、言葉はなくてもそれらで容易に彼の“世界がどれだけ幸せか”がわかる。

これほど繊細に、丁寧に人間の生き様と生きるという美しさを伝えてくれる作品はあっただろうか。

“映画”という表現の奥深さそして、セリフが少なくてもこれだけ心にグサリグサリと刺さるような表現方法があるんだと強く知った。そして、過去一魅了される作品のひとつだった。


“自分の世界”にとって何が大事なモノか、、
木漏れ日のような一瞬の幸せを、感じることができる人間になりたいと心から思った。彼のように、、。




2024.1.30
2回目
ユナイテッドシネマ(キャナルシティ)
16:30〜
20~25/125

男が姪に言ったある言葉が印象に残る
“この世界は繋がっているようで、みんな別の世界を生きているんだ”
“俺も、お母さんも別の世界を生きている”
それぞれの世界、、
生まれながらに自分の世界は決まらない。人は生きていく中で、自分の世界を見つけていくのである。
その自分の世界を見つけるためには
船に乗り、自分の選んだ港に降りることが必要なのだ。
人は同じ世界に生きているようで、皆違う世界を生きているのだと。

側から見れば、彼の暮らしは決して裕福でなければ、結婚しているわけでもなく
世間一般的で言う“幸せ”には定義されないのかもしれない。
だが、彼の姿をみれば誰1人として不幸とは思わないに違いない。
むしろ、幸せそうに輝いてみえる。

彼の言った“それぞれの世界、それぞれの自分の世界”をみつけた幸せ者なのだろう。

ただ、その世界に降りる“港”を選び、人生を構築していった過程には
失ったモノもあれば、選ばなかったモノもあるだろう。
ただ、人生は過去に選ばなかった選択があるように、現在未来とこれから選ばないであろう選択もある。

あたりまえだか、すべては選べない
また中途半端も悪だ。

何が正しいか答えは提示されないが、
自分の船を進む座標や
自分の世界の構築には合わないものが
“幸せ”という生きる意味のようなものには欠かせないのだろう。
そうして、自分だけの世界を理想郷のようにしていきたい。
他人の価値観ではなく自分の価値観をつくっていくのである。

人生は単純なようで複雑、
そして複雑なようで単純だ。


同じような日々だと思う人はいる
だが、同じような日々などない。
木漏れ日や太陽の日差し、、同じものなどない。
それを感じることができるかどうか、、
存在していると
生きているの違いはここにあるのだろうか。


2024/4/14(日)
キノシネマ天神
15:20〜
大体60/120席💺
3回目

「今度はこんど、今はいま」
何気ないその言葉に大きな意味を感じる。

毎日忙しなく過ぎていくなか、
大切な“今”を忘れてはいないだろうか。
“今度”のための“今”じゃなくて
“今”があるから“今度”がある
そう思いながら生きていきたい。
もう二度と訪れないかけがえのない木漏れ日のような“今”を大切に😊


キャッチコピーにもあるように
「こんなふうに生きれたら」
この映画の第一感想は、
まさにその言葉そのものだった。

金持ちだろうが、名声があろうが、子供が何人いろうが、、
そんなものは関係ない。
それは人生を豊かにしてくれる一つのキッカケかもしれないが、
それは絶対ではない。
人の数だけ幸せのカタチはある
その幸せのカタチを手にし、その世界の住人となった平山が魅力的に映るのは摂理だ。
彼の生き方が魅力的な理由がわかった気がする。

繋がっているようで別々の世界を生きる我々だ。

どう生きるか?
何度か考えた経験は誰にもあるはず。
たとえ、その生き方というものを見つけたとしてもなかなか行動には移せないだろう。
今、手に持っているものを手放さなければその場所へはいけないだろうから。
だけど、たった一度きりの人生
やっぱりどう生きるかくらい自分で見つけたいな。


彼のように生きたい、、
これほど自分の人生に幸せを見出せれば
他に何もいらないくらいだろうなぁ



(当作品はザ日常!主人公は決まったルーティンを送りながら生活していく、、
そこへやってきたニコちゃん
彼女が主人公の働く姿を見てにっこり。
彼の美しさを噛み砕いてくれた存在だった)


最後の涙、、
個人的な意見

自分が選んだこの生活、この人生。
同じような日々が過ぎていこうともそれは錯覚
何も変わり映えのない毎日なんてものはない
どこかで少しづつ見えないように変わっていっているのだ。
それがある日、わかる時が来る。
急な出会いや別れ、転機、、そういったものが訪れる。
その度に感情は揺れ動くモノ、、
たとえその時、涙や笑顔や感動、、
そういったものを抑えられたとしても
ふとした時溢れ出すのである。
予期もしないふとした時に、、

それはいつもの道を運転中、
煌めく朝日に重なったように溢れるのかもしれない。
自分でも何よくわからない涙が。
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