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落下の解剖学のarigatouのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

白銀の雪景色の中に青を基調とした画作り。そこにぎっしりと濃密感のある脚本が練り込まれた素晴らしい作品だった。
映画を観る前まで自分は予告編を見てまんまと謎解き映画だと思ってしまっていたが、観終わった後この映画はあくまで人間ドラマに焦点を当てていてミステリーはそれを弾き立たせるための一つの手段として使われていただけという印象を抱いた。
またこういう映画にありがちなどんでん返しをしないことによってチープな印象もなく、カンヌでパルムドールを取ったのも納得の出来。
個人的に最も好みだった点は、裁判で勝利してから映画が終わるまでの一連のシーン。最後はモヤモヤっとした感じで終わるのだが、主人公の気持ちを考えたらそりゃそうだよなとなってしまう。夫がいない現実、裁判で無駄にした時間、何より息子が苦しんだという事実は消えないのだから。
またこの裁判では客観的に正しい証拠がなく、全てが主観的な主張に基づいているため本当は主人公が犯人かもしれないという疑いを我々観客と息子ダニエルに持たせたままエンドロールを迎える。自分は最後のハグのシーンで本当は母親が犯人だったとしても母の気持ちを汲み取りそのことを赦すというふうに判断した息子の決意のシーンに見えました。
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