このレビューはネタバレを含みます
「理解したい」
「1つを選ばなければいけない」
「わかる必要がある」
濃密な152分
最初から最後まで、衰えることのない、ザンドラ・ヒュラーの迫真の演技
後半、力強くストーリーを牽引するマイロ・マチャド・グラナー
犬も素晴らしい
事故か。
他殺か。
自殺か。
見えにくい真実。
裁判官、審査員、傍聴人、検事、弁護士、証人、被告人。大人たちは、どれか1つに当てはめようと躍起になる。
ただ1人、ダニエルは理解したいと、わかりたいと言う。わからない、助けてくれと泣き出す、ダニエル。信じなければいけないものがわからないのであれば、決めるしかないとマルジュは言う。
そしてダニエルは決断する。
犬のスヌープを病院に連れていった、車の中でのサミュエルとダニエルの会話。
「犬は何れ死ぬのだ、覚悟が必要だ」
「この犬はとても賢いんだ。お前が何を求めているか認識し、お前を守り、危険な目に決して合わせない」
冒頭、2階からボールが落ちると共に「落下」してきたスヌープ。
サミュエルの死を見つめるスヌープ。
車での話は、スヌープなのか、サミュエルなのか。
そもそも、本当にあった真実なのだろうか。
車の中で、サミュエルの回想描写はあるが、声は法廷で話すダニエルの声だ。
無罪判決をニュースで聞いた時の、ダニエルのあの表情は、安堵だったのだろうか、罪悪感なのだろうか、不安だったのだろうか、それとも言葉を添えることのできない湧き出る感情なのだろうか。
映画が進むごとに、皮がむかれていくように、解体され、真実に近づいていくように思われる。しかし、私たちを真実まで案内してはくれず、私たちが見たものも真実かわからない。
映画の中で、事件の真相は、さほど重要ではないように思える。サンドラ、サミュエル、ダニエルの、彼らの関係性、そして各々の、理解、考え、感情、決断が大事なのではないかと。彼らのそれが、解体されていく映画なのかもしれないと。
さほど重要ではないであろう真相ではあるが、自分の決断はなんだろうと思いを巡らせてみる。結論は、サミュエルの自殺だったのではと考える。サンドラとダニエルの言葉と決断を信じたいと思わされる。