よどるふ

瞳をとじてのよどるふのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
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本作は「映画について」の話である。それは映画というソフトの話だけではなくて、「映画に出演していた役者」の話であり、「映画を監督していた者」の話であり、現代ではほぼ見られなくなった「映画フィルムと映写機」の話であり、「映画館という特別な場所」の話でもある。冒頭の“劇中劇パート”が醸し出す粗いフィルム映像は、現代的な“劇中パート”と相対化され、本作全体に漂うノスタルジックな雰囲気を象徴している。ラストにおいて、主人公は“映画”がもたらしてくれる奇跡を信じて行動する。その果てをどこまで描くかという作り手の判断には誠実さを感じた。

ゴールポストや窓枠、門扉など、映画のフレームを連想させるものが散りばめられていたり、電気のつかない暗い倉庫で懐中電灯を使って中を照らすシーンは、まんま映画館における暗闇と光を模していたりと、とにかく全編を通して映画の話を直接していないシーンでも“映画”を感じさせるところの多い作品だった。映画という“記録”のメディアを扱いながら“記憶”をめぐる話が展開されていく本作の中で、通常であれば見ることのできない“記憶”をロープを結んで解くことで可視化してみせたシーンが特に印象に残ったところ。ラストの映画館のシーンで、すでに座席に座っている登場人物たちを再配置するところもお気に入りだ。
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