Godfather

ほつれるのGodfatherのレビュー・感想・評価

ほつれる(2023年製作の映画)
4.2
ちょっと前にTwitterで、邦画にありがりな男優の胸ぐら掴んで怒鳴る演技と女優のキンキン声で泣き喚く演技、それがあるから邦画の多くは予告編の時点で観る気が失せるとツイートしたことがある。

「ほつれる」はそういう邦画のダメなところがまったくない映画だ。胸ぐら掴んで怒鳴る男もキンキン声で泣き叫ぶ女も出てこない。
これこそがリアルな日本人の喋り方だし、リアルな日本人の感情表現だ。すべての邦画がこのレベルの演技ならいいのに!と思う。

序盤で恋人が事故死する意外には特に大事件が起こることもなくストーリーは淡々と進むし、主人公夫婦も冷めた感じなのだが、演技のリアリティがものすごいせいで少しも退屈しない。それどころか会話のピリピリした気まずさや緊迫感がリアルすぎて観ていていたたまれなくなる。終盤に不倫がバレたときはむしろ緊張の糸が切れてほっとしたくらいだ。

主人公・綿子の自然な演技がむちゃくちゃ上手いけど、他の役者もみんな上手い。綿子の親友役も木村の父親役もいいし、なんといってもあの夫!
冷静なキャラのようで理屈っぽくてそれでいて粘着質という、ああいう話し方する人いるよねw

胸糞悪い話だというレビューも見たけど胸糞悪いかなあ?
綿子も言ってるようにそもそもこの夫婦自体、不倫で始まった関係なんだし、結局二人ともああいう性なんじゃないの?
結末がどうなったのかはっきりとは描かれないところもいい。

ハイクオリティなこの映画のことだから、エンディングに安っぽいJ-POPが流れたりはしない。それどころか音楽自体なにも流れない無音のエンドロールだ!無駄を全部削ぎ落とした映画。
繰り返すけど、すべての邦画がこのレベルで作られてたらいいのに。
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