肉袋

哀れなるものたちの肉袋のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.7
凄まじく背徳的、インモラルな場所から生まれ出でながら、誰より真摯に自由に人間らしく生きていく姿よ。
複雑化した社会の中で、大人の姿の赤ん坊として生まれたベラにはピュアで原初的な欲望だけがある。性欲、知識欲。やりたいときにやりたいことを選びたい、誰も飢えることなく幸福に生きていてほしい。常識、社会的地位、イデオロギーなどの複雑なあれそれをすっ飛ばしピュアな欲望を貫き最後には知性でそれを克服するベラ、痛快でさえある。

インモラルな場所から生まれ出でるのは人間の誰しもがそうだとも言える。社会的に嫌悪される行いから、そして「インモラルな場所」から私たちは生まれているのだから。ベラと私たちにはさほど差がないということにならないか。今定義されている倫理、正しさ、社会性とは何か?私たちもベラのようにもっと自由に生きていけるのではないか。原初的な欲望に従い、抑圧するものたちを拒絶し、全人類の幸福を願って良いではないか。そしてそれを阻むものを知性によって超えてゆくべきなのだ。

それにしても衣装と美術担当の仕事が素晴らしすぎる。音楽も不協和音が超仕事してる。

実は8月の「覇王別姫」以来、完全に心を奪われていて、何かを観ては覇王別姫の方が良いなとなりその足で覇王別姫観にいく、というのをやりまくっていたんだけども、久々に覇王別姫のことを思い出さず終始引き込まれた素晴らしい映画だった〜!
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