アメリカの貧困なシングルマザーの妊娠期間を描くドラマ映画。監督が元五輪選手という異色経歴で、先日のBAFTAでは本作で新人賞を受賞している、A24の隠れ注目作。
詩的でアーティスティックな16mmの映像美が、望み通りに事が進まない母親の苦悩と葛藤、そして社会構造の不条理が浮かび上がらせる。「17歳の瞳に映る世界」を観た時に似た無情感を覚えたが、劇映画ながらドキュメンタリーのような質感は、現代社会の記録映画としても一定の価値がある。タイトルからしても社会派一辺倒ではなく、「母親」という誰もがなり得る存在への共鳴と普遍性を描こうというメッセージを受け取った。