胃潰瘍のサンタ

ザ・クリエイター/創造者の胃潰瘍のサンタのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.2
何とも表現できない、この映画でしか得られない感覚があった。

AIとの戦争。AIに「愛」はあるか。主人公が少女型アンドロイドと旅をする。アジア的な近未来の風景。
文字にしてしまうとどっかで観た感じしかしないのに、実際に観てみると「こんな映画は観たことなかった」と思わせる作品世界が堪能できる。「観ないと分からない」味わいもまた、映画の醍醐味というもの。

もちろんオタクのギャレス・エドワーズのことだから、色々な映画やゲームへのオマージュはふんだんで、それこそ「あの映画で見た」は山ほどある。だがそのいずれも一捻りしてあって、「見たことあるけど見たことない」映像を作り出している。
『ブレードランナー』的な都市風景にベトナム戦争みたいな光景を組み込んであったり、『Detroit Become Human』を彷彿とさせる設定に設計者とのドラマを組み込んで感情移入を促したり。

だがそういったケレン味以上に、「人が死んだ」ことを意識させる演出が抜群に上手い。
『ローグ・ワン』でもこの「死」のリアリティがラストの強烈な盛り上がりに繋がっていた。
ゴア描写なしで「さっきまで動いて喋っていた人がそうでなくなる」ことの残酷さをこれほどしっかり描ける監督を知らない。ハリウッドで実写版『進撃の巨人』を撮らせるならギャレス・エドワーズしかいないんじゃないか?