だいすま

月のだいすまのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.5
重い。

相模原市の障がい者施設で発生した悲惨な殺傷事件をモチーフに人間の尊厳を問うた作品。

出生地、性別、親、性格、知能、容姿、体力、経済力、その他諸々、我々は選んで生まれて来れたのか。障がい者は望んで障がいを背負っているのか。
否、こうした不作為中の不作為のような状況で生まれてきた人間を、とある人間の偏った思想で存在意義、他人の生命の要否を決め付ける権利はどこにも無い。

現実と理想のギャップ。本音と嘘。
とはいえもしかしたら私自身、上述のような単なる綺麗事を言ってはないかと自省する。何故なら本作に出てくるような世間から隔離された、おそらく想像を絶する過酷な現場に足を踏み入れた事が無いからだ。経験も無いのに、理想像を語る資格はあるのか。
無論、知っているからと言って如何なる理由であれ人間を殺めて良い理由にはならないが、この結論へ至るプロセスは安直であってならないと思う。

人生の明暗、歳も重ねそれなりにどちらも理解しているつもりだが、それでも尚、綺麗事を言ってはいまいかと自問を繰り返す。

本作はある意味究極のテーマを投げかけた作品でありまだ考えが上手く纏まらないが、少なくとも一度は真剣に向き合い深く考えるべきと強く思わされた。

タブー作と言えるかもしれないが、こういう作品こそ世に放たれるべきである。
だいすま

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