水田わさび版ドラえもんの劇場版第18作。オリジナルストーリーとしては11作品目。
地球から音楽が消えてしまう危機に直面したのび太たちが、音楽の力で地球を救うべく立ち上がるというストーリー。
■よかったところ
①「音楽」というこれまでになかった題材に挑戦したところ。ドラえもん映画も何十年も続いているので、マンネリに陥りがちだと思うが、こういうチャレンジ精神は、ファンとして嬉しい。
②ちょっとピンポイントな話になるが、宇宙空間でのび太が叫ぶシーンがよかった。宇宙空間なので空気がなく、声は聞こえないのだが、なんと叫んでいるかはハッキリわかった。小原乃梨子さんではなく、大原めぐみさんで声が再生される辺り、わさドラが積み上げてきた歴史の長さも実感できて感慨深いものがあった。
■微妙だったところ
①「音楽」がテーマなので、もう少し秋を感じる描写がほしかった。『月面探査記』のように絵的な美しさを感じたかった。
②映画版ならではの盛り上がりがなかった。特に前半は淡々と物語が進行し、眠気に襲われるほどだった。ドラえもんの道具を使った見せ場もあまりなく、イマイチ盛り上がらなかった。
③伏線が回収されたときのスカッと感がもうひとつだった。伏線自体はよかったのだが、ドラえもんらしく科学的なうんちくに絡めた張りかたをしてほしかった。「音」なんて小学校でも習う打ってつけの題材だったのにもったいない。
④「音楽」が題材の映画なのに、音楽にイマイチ魅力がなかった。ストーリー上、のび太たちが少しずつ楽器の腕前を上げていくようになっているので仕方ないかも知れないが、もっと鳥肌のたつような音楽を聞きたかった。
■総評
全体的な出来はイマイチだが、新たな題材に挑戦するチャレンジ精神は評価したい。コロナ禍で「音楽の力」が見直されたころにテーマを決めて作品を作ったのかなと感じた。ファンタジー色の強い作品だったが、ドラえもん作品全体を通したテーマである「科学」を忘れない作品作りをしてほしいと思う。