ちろる

あ、春のちろるのレビュー・感想・評価

あ、春(1998年製作の映画)
3.9
ひよこ🐤とホームレス

家族と暮らしていたうちに突然現れたのは、子供の頃に死んだはずの父親。
ホームレスのような下品な出立ちで我が物顔に振る舞う見知らぬ笹一に頭を抱えてしまう紘たちだが、笹一が吹き込んだ異色の風が、歪だった家族の形を不思議なカタチで彩っていく・・・・
「夏の庭」や「お引っ越し」のような家族再生がテーマではあるものの、なんらかの可愛い女の子が登場しがちな他の相米作品とは異なり、この作品はミューズがなんと山崎努さん。
更にほっこりとした大人のお伽話に仕上がっています。
欲望は抑え身にして、なんだかすごくあったかいねっていう相米監督らしさが作品全体に染み渡る。
こんな世知辛い世の中そんなわけにはいかないという斜め上からの視点を封印すれば、なんか熱いものが込み上げてきて、隣の見知らぬ人まで優しくしたくなるような観賞後の気持ちよさがある。
多分監督の中では少し地味な印象の作品の部類なのかもしれないけど、今だからこそ観て欲しい良作です。
ちなみに笹一に右往左往する息子夫婦、紘と瑞穂を演じたのは、相米組である佐藤浩一さんと斉藤由貴さん。
キワモノ役の山崎努さんを上手く引き立てるような過度ではないナチュラルな演技が、この作品の空気感をより良くしていたような気がしました。
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