ヨダセアSeaYoda

ナポレオンのヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
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【STORY】
 フランス革命でマリー・アントワネットが処刑された時に、未来を見据えた眼光を光らせていた男。
 彼、ナポレオンはその後、大きく頭角を表す英雄になっていく。しかし彼には、とても不安定で孤独な側面もあった…。

【REVIEW】
 周囲を恐れさせるほどの強さと、すぐにでも崩れ落ちてしまいそうな弱さ。圧倒的な自信と拭い去れない孤独、カリスマ性と狂気。それらが1人の中に混在するというナポレオンの複雑な人物像を、完璧に表現してしまうホアキン・フェニックスの演技には改めて驚愕させられる。

 あの堂々とした肖像画が有名で、軍師としても天才的だった反面、弱さや異様な執着心で病み病みでもあったナポレオンという複雑な役に本当にぴったりの俳優だと思う。
 『シック・オブ・マイセルフ』を観た時、"承認欲求モンスターを描く現代の寓話"という表現にしっくり来ていたし、それが間違いとは思わないけど、SNSの発展で目立つようになっただけで、昔から承認欲求モンスター自体は存在してたよね。

 実際の歴史を着実に辿りつつも、確実に“1人の人間の物語”としてドラマに仕上げ、過去作で培った経験も活きたであろう迫力の合戦シーンもこなせるリドリー・スコット監督はさすが。多くの人が手を出さなかったナポレオンの物語に挑戦しただけあって、重厚な作品に仕上がっていた。

 ホアキン・フェニックスだけではなく、今作は相手役のヒロインとしてヴァネッサ・カービーの演技・美貌・存在感も100%引き出した作品という印象!彼女は彼女でとても複雑な人物だけど、それをヴァネッサは最高のクオリティで演じきっていた。元々好きですが、さらに好きになりました。

 できる限り本物で撮ったという戦争の撮影は圧巻。CGで補われた馬のケガ描写なども伴って、リアルな恐怖と狂気と痛みの世界を見せつけてくる。さすが戦場クリエイター リドリー・スコット。
 背景のぼやけた白鳥にまで意図を勘ぐりたくなってしまう、リドリー・スコットの巧みな語り口に脱帽。

 世界史の教科書ではわからない、ナポレオンという“人間”の物語を堪能できる1作。

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