ルサチマ

移動する記憶装置展のルサチマのレビュー・感想・評価

移動する記憶装置展(2023年製作の映画)
2.0
『上飯田の話』といい、やはりこの作り手は全く信用に値しないし、ものづくりに対する問いの立て方をハナから間違えてるという印象しかない。震災後の街おこしの流れに位置づけられる表現活動のひとつだと思うが、これは単なる地域性を景観として提示するだけで、一応はそれっぽく街の人間の話を取り込んでみたところでそれは個人史を表向きに肯定するだけで、実際のところそれが多少なりとも普遍的な問いを投げかけるということはない。
中盤で語り手と聞き手を1人の身体に担わせるという試みに出てはいるが、その行為自体に何か別の記憶の受け渡しの可能性があるかといえば、そんな簡単な問題じゃないのは明らかで、例えばこの程度の作り手にネストラーを持ち出すまでもないが、徹底的に相手の言葉を自らに引き受け、且つ一才そこに余剰を生むことない発声で世界を異化するということはとっくにもっと高度な方法でやられているし、そこまで突き詰める覚悟さえ感じない。中途半端なアート性というか、いかにも現代的な個人(当事者)肯定主義という感じだし、もっというと実際には語りに引っ張られて俳優が言葉を紡ぐ様子をマイクは記録してしまってる以上、これは個人を肯定するようでいて実は映画的な演技に内包されてしまう自己表現でしかないと感じざるを得ない。声の演出に限らず、このことは役者への導線設計にもつながってることは指摘しておく。
少なくともこれが大学院にまで行って撮られたのだとしたら、教員たちはもう少し本気でこの作品を否定しなきゃいかんだろうという気はする。。
ルサチマ

ルサチマ