トケグチアワユキ

市子のトケグチアワユキのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.2
評判を目にする機会がすごく多くて、どんどん気になり始め、ついに観に行った。
評判に違わぬ、観ごたえ十分な良作。

観に行こうと最終的に決めたのは、脚本が上村奈帆だとわかったから。
もちろん原作が監督なのは知っているが、上村奈帆は今年の夏ドラマで「カメラ、はじめていいですか?」という、そのクールの私のイチオシを撮った監督だったから。


人はすべからく幸福を追い求める権利を有する。
これはすべての人間に与えられた平等な権利だ。
私は幸福の希求という人間の本能的な行動を、違法だからとか社会常識にそぐわないとか、簡単に非難すべきではないと思っている。
犯罪だったとしても、なおだ。
もちろん生きている地域で違法とされている行為なら、裁きを受けなければならないことだってあるだろう。
しかし、そう選択しなければならない時が来ることはある。
誰も非難すべきではない。


子供の頃の市子の行動がいくつも描かれている。
実に意地汚く、狡賢い。
そうしなければならない。
と同時に、市子はイジメられている同級生を身体を投げ出して守ったりする。真意は別にして。


市子の母なつみの「ありがとね」は実にいたたまれなく、しかし市子を救ったはずだ。

誰もが犯罪を受け入れ、ホッとする可能性はある。
人間とはそういうものだ。
明日あなたは別の名の彼女に出会うかもしれない。