HIRO

市子のHIROのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.0
杉咲花の本領発揮といったところか。
彼女の頑なさ(?)を感じさせるような、無表情にも関わらず不思議と惹きつけられる眼差しから、切なさと閉塞感と、果てしない程の寂しさが伝わってくる。

結婚しよう、一緒にお店を持とう、明日花火を見に行こう等、どんなことをお願いされても、決して「うん」とは言わず、「ありがとう」で返すしかできない。そんな彼女の言葉の不安定さがどこからきているのか、誰も掴みきれずに時だけが過ぎてしまう。そしていつの間にか彼女は目の前から去っていってしまう。

逃げるしかできない人生に追い込んだのは誰なのか。親?大人?社会?

誰であろうとそれを全て飲み込んで生きていこうとする、彼女の強かさと息苦しさが却ってその魅力を感じさせる気がした。

「遠いところ」を観た後に感じた苦しさとは異なる、滅びの美しさのようなものさえ感じる。決して美化してはいけないのだろうけれど。

ただ、もう少し彼女たち親子の過去も知りたかった。社会的な問題について考えさせられながらも、杉咲花の魅力に圧倒されて観終わった作品だった。
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