烏丸メヰ

エクソシスト 信じる者の烏丸メヰのネタバレレビュー・内容・結末

エクソシスト 信じる者(2023年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

伝説的第一作『エクソシスト』との接点を強固に見せ、同じ世界観の中で雰囲気や描写を踏襲した正統なアフターストーリー。

医療ではお手上げの悪魔憑き、という展開含め「語らない所」と「明らかにする所」もぴたりと一作めをなぞる。
が、悪魔の力や憑依のあらわれとしては、煽りスキルは上がっているものの、かなりまろやかに(簡単に言ってしまうと、一作めにあった卑猥系の憑依症状がほぼ抑えられている)。

そこに現代的要素として、湿っぽさや(一作めではメリンやカラス等聖職者の登場人物が主体だったのだが)悪魔祓い素人多めの群像劇が散らかっている事、多角的にエクソシズムを紹介する事等で、この映画が「エクソシスト(悪魔「祓い師」)」を主体とする作品性とは若干のズレが生じている感じをどうしても受けてしまった。

それらと引き換えに演出されるのが、二人の少女アンジェラとキャサリン、そして主人公ヴィクターを巡っての、サブタイトルでもある「信じる者」の要素であり、
信仰心の篤いキャサリンの両親
神を信じないアンジェラの父ヴィクター
の対比がなされる。
終盤に向けて明らかになるヴィクターの過去は、迫られた選択すら重なり、過去の妻も今回のキャサリンも
「生かす!と選んだほうが死んだ」
というそれらの結末が悪魔によるものなのか?を理不尽な余白として残していく。

……のだが、「信じること」に対する解答(=テーマ性)の示唆もはっきりとした強さがなく観るものの解釈に委ねられる部分があるように見えるので、
「(悪魔憑きと悪魔祓い師の要素を抑えてまで)悪魔祓いの映画を通してどんなテーマを伝えたかったのか」
が、個人的には感触として残りにくかった。

特に「医療では解明できない」点と、性的暴行形跡の検査のくだりを描くなら、いっそ私なら
“検査の結果、体が無傷なのに中に何者かの体液が出されている不思議→エクソシスト一作めの悪魔パズズは性器が蛇だから(蛇がいたあの、靴が水没してた森の地下で少女達が憑依された)”
にするわ、ぼくのかんがえたエクソシスト語って悪いけど、そのくらい素材はいいのに料理が足りない歯がゆさがある。

“信じる心パワーのラストバトル”では直近にあった『死霊館のシスター 呪いの秘密』がかなり劇的に描いてたせいもあったかも知れない。
主人公ヴィクターとアンジェラ二人の名前が“天使”にまつわるものなのも何らかの皮肉なのかな。


絶妙な既視感から始まるファーストカットの他、ファンサービス要素は反則級に豪華と言える。
二人の少女の演技と、『エクソシスト』が確立した悪魔憑き症状の禍々しいルックも◎。
ブラムハウス編エクソシストは三部作構成と聞いた覚えがあったけど、今後続くとしたら次回のファンサービスから主要メンバー構成とか諸々想像が広がらずにはいられない。

個人的には、前述のように卑語少なめなので悪魔祓いモノとしては珍しく吹替も観たくなった。
原語が「S×× o× a b××××」でも「S×××」でも字幕や吹替が「クソ野郎!!」とかに和訳されるので、卑語連発の悪魔憑きが出てくる映画は元の英語が聞こえてないとニュアンス伝わらないから。今作はその心配が無さそうではある。

余談だけど、バリバリの悪魔祓い映画では『リーピング』とか『ポゼッション』、ひねったやつだと『バトル・インフェルノ』が好きです。よろしくな!
烏丸メヰ

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