イヌケソ

悪は存在しないのイヌケソのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

画面に「EVIL DOES NOT EXIST」と出る。
“NOT” だけが赤字。かっけえ。
続く、森の木々を下からあおる映像。
森の中を、空を見上げながら歩くような。
木々の枝が重なり、血管のような、
はたまた夜空に拡がる星々のような、
とても不気味で、不安定な音楽と一緒になると
これから起こることの不穏さを感じて鳥肌が立った。

このイントロだけでもうやられちゃったんだけれど、
続く、自然に没入する音と映像でかなり眠くなる。

「グランピング場建設」の住民説明会のところから
俄然緊張感が走り、眠気が吹っ飛ぶ。

水は高いところから時間をかけて低いところに流れる。
上で起こったことは下に思いもよらない影響を及ぼす。

今の日本の惨状を思わずにはいられない。

金目的でコロナ助成金を得ようと考える社長。
計画を後押しするコンサルタント。

社長は会社を潰さないように考えてこの計画に着手した。
コンサルは計画を成功に導くのが仕事だ。
だから、絶対的な悪とは言えないと思う。

メクラでコロナ助成金を与える行政が悪いとも言えるが、
助成金制度が悪いわけではない。

政治に文句を言うことはできるが、政治家を選んでいるのは
有権者である自分たちだ。

使いパシリの二人。
バツイチ婚活中、元俳優の付き人のマネージャー(男)。
元介護福祉士(女)マッチングアプリで経験あり。

車の中で、なんでこの仕事やってるの?俺辞めよーかななんて
話をしている。

だから「グランピング場建設」にはあまり主体的には関わっていない。
二人ともちょっと宙に浮いているような感じがする。

巧と一緒に働きながら、自然の大切さに気づき、
社長に計画中止を進言、計画は頓挫し、自然は守られる、、、
と言うのが、ありがちなストーリーだが。

娘がいなくなることで、イントロの不穏感が蘇る。
きっと死体となって見つかるのだろう、、、
などと安易な予想をしていたら、まんまと裏切られた。

正直、なんでそうなるの?って思うし
意味があるエンディングなのかどうかもよくわからない。

でも意味はあるはずだ。
しかし、それが監督の口から語られることはないだろう。

だから観た我々は考える。
タイトルの意味とこの映画全体。
そして結末のことを。

果たして、悪は存在したのだろうか?
存在したとしたら誰が悪だったのだろうか?
イヌケソ

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