ジュリアン

悪は存在しないのジュリアンのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.5
冒頭で提示される対比構造は話が進むに連れて紋切り型な枠組みを解体していき、やがて中動態的なオチが待っている….と思いきやラストにとんでもない展開が待っている本作。
手負いの鹿と人との関係や現地住民とグランピング事業との等位関係を丁寧に描写していたのは全てラストのためだったのかとスッキリした。対比構造の外し方もあって最高。

しかし、時系列や羽、花、カメラワーク、不気味な母の不在に物忘れなど、まだ解釈できてないことが盛りだくさんなので人の書評が楽しみ。

また、主人公の巧は個人的な記憶を想起させる人物像でもあった。父が鬱で無職になった時に軽井沢に家を買い、子供の送り迎え以外は専ら薪割りをしていたので造形が重なってみえた。父は便利屋ではなかったが、ロケーションが長野で、母の不在も相まって懐かしい気持ちに。