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悪は存在しないのILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
原題『悪は存在しない』 (2023)

監督・脚本 : 濱口竜介
撮影 : 北川喜雄
編集 : 濱口竜介、山崎梓
音楽 : 石橋英子
出演 : 大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁、他

長野県の自然豊かな高原を舞台に、巧とその娘の花が穏やかな日々を暮らす架空の小さな町にグランピング施設の建設計画が突如持ち上がり、水源や動物たちの生態系が脅かされる危険を不安視する住民たちの間に動揺が生まれ、都会の論理と地元住民の論理とが衝突する様を描いたヒューマンドラマ映画。

第80回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞作品。

「鹿」映画。
そして、
「水は低い所へ流れる、上流の方でやったことは必ず下に影響する」映画。

面白かったです。

地元住民に対する思慮が足りないためトラブルになるという、形を変えれば何処でも起こりうる物語なんですが、石橋英子の音楽、猟銃の銃声などによる終始流れる不穏さと緊張感、わかりやすい善悪の対立構図でなく、自然と人間、動物と人間、人間と人間、と立場、見方によって善悪の所在は変わることも示唆し、会話の面白さでいえば、説明会での意見交換、芸能事務所の二人の車内会話、など、濱口竜介脚本の会話のやりとりはやはり秀逸だったし、唖然とするしかないラストの展開は観る者によってそれぞれ解釈がある、解釈の余地が広い「映画」的な映画でした。

ただ、起承転結がしっかりある物語映画しか観ない方はなんじゃこりゃ?となる事は確かだと思う…

個人的には、もし、エリック・ロメールが『火まつり』(柳町光男監督 1985年)を撮ったら、こんな感じになったんじゃないかなぁと、ラストの展開含め思いました。
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