こういう映画を観るひとはどういう人なんだろうか考えてしまう。自分もその中に含まれるのだが平常心ではいられない。
ポーランド側の妊婦が夫からそういう映像を見せられて、そんな映像を見ないほうがいいというのである。もっともな話で妊婦にしてみれば子どもの明るい未来を描いて欲しいのだ。その中で夫はノイローゼのようになってしまう。
境界上の前線の兵士には難民は厄介者だった。自国へは置きたくない存在であり、ベラルーシとポーランドの境界上で行われている現実はまさに観たくない世界なのである。
ただこれが世界の現実としてあり、日本はそうした国境線もなく知ることもない。ただニュースで難民問題を知るだけなのである。それをどう思うのか。未来の子どものために知る必要はないと考えるのか?複雑な心境である。こういう現実を観てしまうと不条理な世界なんだと虚無感に襲われる。それをケアする精神科医がいるのだ。軍隊側にも、境界上の市民の中にも。この映画をどういう視点で観ればいいのか、正直悩んでしまう。
ひとつだけ明るいシーンがあるとすれば難民として逃れて保護される家で子どもたちがラップで通じ合うとことかな。ほとんど通じ合うことがないのが国境という存在なのだが。