ざまんごー

人間の境界のざまんごーのネタバレレビュー・内容・結末

人間の境界(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

はああ。この無力感。どうしよう。
世の中の不条理を目を覆いたくなるような現実を、曇りのないカメラで捉えている作品。
綺麗事はない。
特に最後の5分間がどうしようもない説得力と共に、トドメの一撃を与えてくる感じ。

助かる人間、助からない人間、傷つける人間、傷つけられる人間、その境界なんて紙一重なんだと。
結局のところ社会システム全体(政治、経済含め)が今の現代社会を動かしていて、私達はたとえどの立場にいても所詮踊らされてるレゴに過ぎないのかな、なんて思わされる。
ただ、システムを超えてくるのが個人の「感情」「信念」なのかな、とこの映画を観て思った。結局大きな力に屈せず、システムの大枠を超えた行動をさせる最後の砦が「人間的な感情」なのかなと思ったり。ユリアの勇気、ヤンの行動とか。
(確か「夜と霧」でもそんな事を思ったような)

すごくリアルだと思ったのは、「迫害する側」「迫害される側」の単純対比では無く、様々な立場からの絡み合った現実を、余す事なく映し出していた事。支援する側の内部ですら、対立は起こるのだから。

ポーランドもベラルーシも行ったし、個人的にポーランドは何回も訪れた思い入れのある国だけど、この現実についてはあまり知識が無かった。EUの暗部を映し出していて学びの多い映画だった。今この瞬間も起きている現実。

はあ。自分に何が出来るのかを考える。
ポーランド政府の妨害を恐れず、
この映画を作った監督の勇気に高評価。
そしてこの映画がポーランドや世界でヒットしたという事が、まだ希望の光を映し出してる気がする。
ざまんごー

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