ユウト

ぼくは君たちを憎まないことにしたのユウトのレビュー・感想・評価

3.0
直接的なタイトルである。
劇場公開時、何度か観に行こうとタイムテーブルを調べた。
ただ気持ちがシンドくなりそうで観に行けなかった。

憎まないことはできるかもしれない。
事故で亡くなったことでもあるから。
でも愛する人をテロで亡くした悲しみはどうなるのか。
タイトルが語る思いもわかるが、悲しみを作品としてどう向き合っているのかが、私の興味だった。

思い出したのが
ダイアン・クルーガー『女は二度決断する』。
観客である私はやりきれない気持で呼吸困難になる程辛い映画と記憶しているが、もしかすると憎んだり復習したりすることもまた人の当たり前の姿だと納得したものだ。
本作より『女は二度決断する』のエモーションの方が共感しやすかった。

憎めばテロリスト達と同じ輩になるので、
憎まないことにすること。
それより大切なこと。
消えることない悲しみと共存すること。
ママ友達が食事の世話をしてくれたが、それを「ウンチみたい」と食べない子供と一緒にトイレに流すシーンがあるのだが、
ではその時の食事はどうしたのか。
あの父親がテキパキと子供の好物を料理して美味しいと食べる場面すらない。
散らかった部屋を親類が呆れる。
きっと誰かが片付けているのかもしれない。
子供の生活に必要な肝心の親子シーンが無く、主人公が悲しんでいる場面ばかりである。
(まあイマドキ『クレイマー、クレイマー』のフレンチトーストも作れないダメ男が、作れるようになった時に別れが来ました、なんて単純なおセンチは描かないが。)

映画としては悲しみをファンタジーで包んだのか。
ラストシーンでキャメラがゆっくり主人公から遠ざかるのは、
後はもう、あなたが向き合うこと
と、したのか。
憎まないことにすると書いた記事が主人公に与えた自己憐憫も、悲しみは消せはしないのだ。

子供役の演技が良かった。
本作の宝である。
ユウト

ユウト