みゆ

アイアンクローのみゆのネタバレレビュー・内容・結末

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

私全然詳しくないしプロレス映画かぁ…と思ってたんですが、兄弟愛の映画でした。80年代に日本でも流行った鉄の爪と呼ばれる、頭を鷲づかみにするその技は、実は家族をつかんで離さない父親の象徴でした。フリッツ・フォン・エリックの息子たちにこんな壮絶な人生があったとは。米国南部の白人社会の縮図のような家族。偶々父親がただのマッチョではなく偉大なレスラーだったから息子たちもそこで頂点に立たねばならないという強迫観念。ワナビーではなく本物のレスラーにならなくてはならない。どう見てもレスラー向きではない末っ子の悲劇には戦慄した。最初坊ちゃんらしい風情のザック・エフロンの二男が次第に追い詰められていく様を体現して見事。肉体改造も凄かった。偉大なる父(偉大なる米国の暗喩)の虚像に気付いて自分の家族を作ろうとする彼には救われる。映画の後半、立て続けに兄弟を不幸が襲う。迫力のレスリング場面はあるが、本質は兄弟の硬派で熱い人間ドラマ。お互いを信用して支え合ってるはずなのに、すれ違う運命が切ない。
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