ダイゴロウ

アイアンクローのダイゴロウのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.3
映画館にて鑑賞。

「親から期待される」ということは「親から認められる」という子供にとっての大きな喜びであると同時に、大きなプレッシャーを背負い込むことにもなる。
偉大な親の仕事を継ぐということは、名誉であると同時に、広がっていたはずの未来を狭めることになる。

本作は「アイアンクロー」の必殺技で知られる有名なプロレスラー、フリッツを父に持つ5人の兄弟たちの悲劇的な"闘い"を描いた伝記ものである。
(重厚なヒューマンドラマであり、プロレスに対する愛や知識は無くても問題なく楽しめる作品である。)

本作において、子供たちから「プロレスをやりたくない」という言葉はついぞ出てこない。プロレスに向いていないであろうマイクだって「期待できない息子」の枠から出るチャンスとして運命を一旦は受け入れたように思える。
この"父や母から認められたい"という気持ちは、多くの子供が自然と抱く気持ちであり、子供たちでコントロールできない部分だと思われるからこそ、親は自分のエゴを捨てて子供に自由な未来を選択させるべきだと強く思う。
ましてや兄弟間での期待度をランキング形式で発表するなどもっての他であろう…。
母親にも息子たちを救えるチャンスは幾つもあった。特にマイクが恐怖を母親に打ち明けたときの「怖いことなんてない」といった回答のシーンが悲しかった…。父の教育に逆らってでも他の生き方を勧めるべきではなかったか…。

こんな苦しい家庭環境(苦しいのは客観的に見た感想で、兄弟たちには自然な環境だったのだと思う)の中でも、連帯する兄弟たちの友情がどこまでも熱かった。特に兄であるケビンに先行して王者への挑戦権を手にしたデビッドに対する嫉妬と称賛を打ち明けるシーンが堪らなかった。本当に優しくて、お互い愛し合っている兄弟だった。そんな一家を襲う目を覆いたくなる悲劇の数々…。
悲しくて突き刺さるような物語だった。

因みにザック・エフロンの身体作りが凄すぎて、暫く彼に気付かないレベルだった。

(ケビンの息子たちはプロレスラーになった。しっかりと自分で選んだ道であるのか少し心配になってしまった…。)