いわゆるプログラムピクチャーというかB級というか、そういう位置付けの（であったであろう）作品。だが意外に楽しめる。

奄美大島に小児マヒの生ワクチンを届けるためにパイロットが飛ぶ。が途中、台風観測所のある島からのSOSを受けて緊急着陸する。観測所に向かったパイロットを待っていたのはニセ札造りの犯罪者一味で・・という筋立て。

主人公のパイロットに本郷功次郎。命の大切さを知るが故に臆病になったという役柄に、彼が漂わせる「正義漢」な雰囲気がマッチしている。その本郷の操縦で奄美にワクチンを届ける看護婦役に三条江梨子。相手役というより脇に甘んじた役どころだが、白衣が似合ってお美しい。
そして話を引き締めるというかむしろ中心になり引っ張っているのは、島に不時着したという設定の犯罪者一味。女ボス役は永田社長の愛人（当時）だった中田康子。美人かどうかはさておき峰不二子的な“艶”と“悪さ”を覗かせている。男性陣は眉を剃り“目力”鋭い大辻伺郎、スキンヘッドの藤山浩二、ザ・悪役の高松英郎というラインナップ。高松をもっと動かすと思いきや中盤であっさり退場してしまったのは残念。

ほか観測所所員にはこの頃の大映映画の常連脇役が並ぶが、のちに大魔神を演じる橋本力や『しとやかな獣』でドラ息子を演じたくらいしか印象に残っていない川畑愛光がキャスティングされているのが目立つといえば目立つところ。

物語の舞台となる「サソリ島」は荒涼とした風景が印象的。指宿ロケの賜物らしい。しかし物語の大半は観測所内（セット）で繰り広げられる。上下に幅がある所内の階段を昇り降りする時のカンカンッという靴の音が耳に残る（それを活かすために何度も登場人物を昇り降りさせたのだろうか？）。上から見下ろす、下から見上げるカメラアングルもまたよし。

ちなみにDVDのジャケットのような躍動的なシーンは本編にはない。ついでにタイトルにある「視界ゼロ」のようなシチュエーションも出てこない。まぁそういう所も含め「B級」、ということで。

本郷のパイロットが、ポリオ・ワクチンを積んだセスナ機（？）で鹿児島に向う途中、天候観測所の通信をキャッチ、島に着陸する。観測所は偽札ギャングの一味が占拠していた。ギャングは脱出用の機を奪おうとするが、ナースの三条がワクチン（ドライアイスは2時間しか持たない）を届ける使命感から抵抗、しかし伝書バト、サメ撃退用拳銃など小道具は用意されても、脱出計画は次々と失敗、ギャングも逃亡するにはガソリンが不足しているので、ガソリンを運ぼうとするが、爆発。このようにお互いの計画は巧く運ばない。それは『新幹線大爆破』「スピード」に先んじており、評価したいが、大詰めはありきたりで、こうするしかないのは分かるが、村野鉄太郎にしては今一つの感がある。ところで、視界ゼロではないし、脱出したいのはギャングたちでは？

飛行機乗りの男（本郷功次郎）が看護婦の娘とワクチンを届けるために奄美大島に向かうのだが・・・

飛行機移動中に嵐にでも巻き込まれるお話なのかと思ったら密室スリラーだった。

劇中の時間経過と映画の尺がほぼシンクロ。「真昼の決闘」を思い出す。

１１/２１＠ラピュタ阿佐ヶ谷