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アリラン ラプソディ〜海を越えたハルモニたち〜のakiakaneのレビュー・感想・評価

3.6
戦争を体験し、戦後朝鮮半島に帰れず、就職は朝鮮人だからと門前払いされ、貧困と差別に苦しみながらたどり着いた神奈川県川崎市。
ハルモニたちは人生の終盤に地域の人や仲間のハルモニたちと日常を生きている。

一見穏やかに見える日常だが、1999年のファーストシーンで監督が尋ねた「夢はありますか?」に、ハルモニたちは口を揃えて「夢なんかない」「よくここまで生きてきた」と振り返る。
勉強する間もなく働き、税金を納めてきたのに選挙権も年金もない。自分の名前すら書けない人もいる。それでも彼女たちは手を取り合い、皆で歌って踊って旅行して協力者たちとともに社会に意思を示す。そんな彼女たちにヘイトスピーチが押し寄せる。

思い出や日常を語るハルモニたちはみんな可愛くてパワフルだ。しかし明らかにその「語り部」はこの世を去り少なくなっている。
そんな不安と彼女たちの笑顔の裏で今もなお償われていない歴史的・政治的・社会的不正と社会に蔓延る憎悪の影を本作は教えてくれる。

《余談》
①ハルモニ(母)たちの話なのに女性特有の話が少な過ぎた点に違和感。
今以上に女性だから受けた差別が人種差別と同じかそれ以上にあるはず。

②時系列と出来事がちょいちょい飛ぶのでテロップで説明が欲しかった。

③識字学級の人たちはきっと良い人たちなのだが、ハルモニたちを何もできない子ども扱いしているように感じた。
そんなコミュニティに対してハルモニたちから出てくる言葉が肯定的なのは当たり前だろう、とどうしても穿って見てしまう。
同じコミュニティだから協力もできるが揉め事もあるはずだが、そういった一面はなかったのだろうか。
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