てつこてつ

雪山の絆のてつこてつのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
3.8
1972年に起きたウルグアイ空軍機便遭難事故(「アンデスの聖餐」としても非常に有名)の生存者たちの72日間にも及ぶサバイバル脱出劇の一部始終を丁寧に描いた秀作。

1993年のフランク・マーシャル監督&イーサン・ホーク主演のハリウッド版も劇場公開時に観て感銘を受けたが、本作は実際に遭難した乗客の殆どがウルグアイ国籍であり、そのウルグアイが制作にしっかり関わっているのに大きな意味がある。

また、ハリウッド版では、どうしてもイーサン・ホークが演じた英雄的な活躍をした人物に焦点が当てられていた感があるが、こちらは、生存者全員はもとより、非業の死を遂げた乗客一人一人のキャラクター描写が丁寧、そして何よりも敬意が感じられる。

但し、墜落事故の原因自体はWikipediaによるとパイロットにあるようなので致し方ないのかもしれないが、乗務員については、他の乗客とは異なり名前など一切出さないのに少し違和感。

凍えんばかりの風雪に晒された飛行機の残骸の実物大セットなど物凄くリアルだし、壮大だが、人間がとてもじゃないが生きてはいけない険しいアンデス山脈の描写も、最終的には16人もが無事に生還した事実がまさに奇跡だと実感させられる。

エンディングロールも生還者、犠牲になった乗客たちへのオマージュに溢れていて余韻が残る。

また、その後の「聖餐」に纏わる騒動を敢えて描かなかったのも正解。

生存者のリーダー格の一人がその後宝くじか何かで億万長者になったというニュースを新聞で読んだ記憶がある。この奇跡の生存で運を使い尽くした訳ではないんだなあと当時は思ったもの。
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