Hiro

雪山の絆のHiroのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
4.0
「雪山の絆」
今生きていることの不確実性。それをまざまざと見せつけられた様な気がする。

飛行機の墜落シーンは思わず目を背けたくなるほどリアルで、残酷で。でも実際はもっと酷いものだったんだろう。

構成が見事でした。語り手に彼を選んだのも、物凄く意味があると思う。生存者だけではなく、あの雪山で生きてそして死んでいった人々の気持ちに少し触れる事ができた様な気がする。無理に感動的にしようとはせず、あくまでも彼らの体験を描くというのが良かったです。誇張も何も無い感じが。

人が人である、というのはどういう事なんだろうとこの作品を見ながらずっと考えていた。極限状態にあっても、人は詩を諳んじるし、誰かを思う。例え人肉を口にするという平生では非人道的だと言われてしまう行為をしていてもなお、人間らしくありたいと思うのは何故なんだろう。

あれほどの極限状態にありながら、誰1人として錯乱しないのが本当にすごい。いや、今作では語られていない状況も勿論あるだろうし、終始穏やかであった訳は無いんだけど、それにしたって食糧をめぐって争いが起きたり、誰かを傷つけたりしないのが驚きだった。極限状態にあったら、誰かを傷つけたりするものだと考えていた自分が浅はかに思う。

いやしかし途中で映画であることを忘れてしまうほどのリアルさ。どうやって撮影したんだろう、みたいなシーンが多過ぎる。凄すぎるな…。

生き残った彼らは、何を考えながら生きていったのだろう。どうして自分たちだけが、という問いを繰り返していたのかもしれない。運なんて言う言葉では片付けられないほどの壮絶な出来事を前に、人はどうやって立ち直っていくんだろう。彼らのその後の人生に想いを馳せずにはいられない。
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