気高く我慢強く美しい、あるいは暴力的で粗野であるというイメージが意識的／無意識的にまとわりついてしまうフィクションにおける黒人のイメージが独り歩きして雪だるま式に暴走していく茶番劇の滑稽さが面白い。堅物でシニカルさを含みながらも、その渦に飲み込まれていくジェフリー・ライトの死んだ目をしながらのステレオタイプ演技は最高の一言。
物語の語り口もかなり特殊で、劇中の展開を遮断するかのようにメタ視点を挿入することで、無知で単純なバカどもが喜ぶための、もはや物語ることも馬鹿馬鹿しい代物に対しての一貫した冷めた視点が、より一層アイロニーを感じさせる。
他人が書いた本をこき下ろせるという不純な動機から審査員を引き受けたものの、最終的には世間が求めカテゴライズしたがる「アフリカ系アメリカン」ものを書き上げ、そこに魂宿っていないことを指摘され安堵するという、当初と真逆のスタンスになる点も面白い。
一方で、劇中でも安っぽさの象徴として評されるメロドラマ的な家族の繋がりが並行して強調される。リアルとフィクションの対比としての機能を果たしているものの、それこそが若干のステレオタイプを感じてしまったのが惜しい。
