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異人たちの盆栽のレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.8
鮮やかな光


 山田太一の『偉人たちとの夏』を再映画化した本作。1988年に日本で一度映画化された限りで、今回が2度目の映像化。主人公がゲイに変更されたりなど幾つかの改変はありましたが、これが意外と日本版よりも自分でも信じ難いほど感動。より「孤独さ」にフォーカスを当てたゲイ版『偉人たちとの夏』。

 物語の大まかな構成は日本版と同じなので、違いを見つけながらの鑑賞。主人公がマンションの自室から外を眺めるシーンが日本版よりも目立ち、より一層社会に孤立している人間像の可視化が分かりやすくなっています。

 死んだ両親と再会してからは、主人公はすっかり言動さえも子供に戻り、空白の少年時代を満喫しようとする。ここで生まれるのは家族の温もり。主人公が両親と過ごすシーンは映像さえも温もりある色使いになっていますが、ハリーと過ごす時間と一人の時間の時はどこか冷めきったような心がない映像の色使い。両親との会話シーンはかなりエモーショナルな仕上がりで、別れの時は涙が出そうになるほどでした。

 『リプリー』を観てからアンドリュー・スコットのファンになり、今回も彼目的で観たようなものですが、静かな演技力は相変わらず引き込まれる。実際に同性愛者である彼だからこそ引き出すことができるゲイとしての演技。力強い存在感です。

 二重で描く愛の物語に感涙しながらも、ファンタジーとしての異様さ、社会的メッセージに身を預けたくなる素晴らしい作品。

2024.5.10 初鑑賞
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