Rena

異人たちのRenaのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.5
ポール・メスカルの姿が映し出された時、胸騒ぎとともに覚えたあの違和感。
ただ、彼とアンドリュー・スコットの演技が素晴らしく、その不安はいつの間にか薄れ、落ち着いた状態で観賞。
ところが終盤、何かが崩折れるような感覚とともに「 あぁ、そうだったのか⋯ 」となりました。

見て見ぬふりって
なんて悲しい行為なのだろう。
たった一言、声をかけるだけで
受け入れ、認めてあげるだけで
心が潤い、今後の人生が良い方向へと向かう大きな手助けになるであろうはずなのに⋯

でもその一声は
簡単なようで難しく
時に、勇気を出さなければ踏み出せない場合もあるのかもしれない。
ただ 同時に、幼少期のトラウマを消し去ることはそれ以上に容易ではないということを、決して忘れてはならない。

俳優陣が本当に素晴らしいですね!
ジェイミー・ベルもいい俳優になったなぁ⋯ と しみじみ感じ、クレア・フォイも、嫌悪感や失望を表現するのが上手いなぁ⋯ と。

そして、シャーロックで初めて観た時に「 なんか凄い人がいる!」と 衝撃を受けたアンドリュー・スコットも、
アフターサンの時とはまたひと味違うポール・メスカルも「 まだ若いのにこんな演技も出来るんだ!」と 新たな発見とその魅力に驚き、
二人の視線や瞳で表す表情が本当に素晴らしく、卓越した演技力とその表現力にただただ見入り、展開を見つめていました。

上映終了後も、アンドリュー・ヘイ監督が作り出す世界と その不思議な感覚から抜け出せず、これも彼の手腕の一つなのかなぁ⋯ ? と、
ぼんやり考えながら、孤独を描くのがとても上手く、寂しいけれど、どこか温かく 優しい。そんな、彼の作品で感じる余韻「 好きだなぁ⋯ 」と思いながら、浸るほどの時間もなく直ぐに来てしまった地下鉄を仕方なく受け入れ、そのまま静かに帰りました。
Rena

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