帰国を考えている移民労働者が冷蔵庫を空にするため残り物の食材でこしらえたスープを友人知人に配る日々の終わりに、ベルギーの森の小径で身をかがめている女性と出会う物語。彼女が熱心に見ていたのは苔。小さきものたち、見ない人たちには見えない、だけどそこにいるものたちの世界。残り物のスープ、灯を落とした工事現場、顕微鏡で覗く苔の色、その国でその街で、"その他"として生きる淡い影をまとった人たち。人と人が出会って互いを少し知ることも時にはそれだけで1本の美しい映画。留まることにも帰ることにも必然性を見つけられない移民労働者の男性と、苔を見つめる中国系女性学者の出会い。良かったです。
