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シャクラのkuuのレビュー・感想・評価

シャクラ(2023年製作の映画)
3.5
『シャクラ』
原題 天龍八部之喬峰傳 Sakra
映倫区分 G
製作年 2023年。上映時間 130分。
劇場公開日 2024年1月5日。
ハリウッド大作でも活躍する香港のアクション俳優ドニー・イェンが、製作・監督・主演を務めた香港・中国合作武侠アクション。
香港を代表する武侠小説家・金庸の長編小説『天龍八部』を原作に、4人の主人公のうちの1人である無敵の武芸者・喬峯の活躍を描く。
実写映画『るろうに剣心』シリーズなどのアクションシーンを手がけた谷垣健治がアクション監督を務めた。

丐幇(かいほう)の幇主・喬峯は人々から慕われる英雄的存在だったが、副幇・馬大元殺しの濡れ衣を着せられてしまう。
さらに漢民族ではなく契丹人であるという出自まで暴かれて丐幇を追放された喬峯は、自分を陥れた人物を探すとともに、自身の出生の真実を突き止めるべく旅に出る。
しかし彼の行く手には、さらなる罠が仕掛けられていた。 
武林最強の技『降龍十八掌』を駆使して刺客たちを次々と倒していく喬峯だったが……。

1960年代に大成功を収めたLouis Cha Leung Yung、別名金庸(武俠小説を代表する作家で、その作品は中国のみならず、世界の中国語圏で絶大な人気を誇る)の小説『鬼神半妖』(天龍八部)を映画化した今作品は、宋代に生まれた喬峰の物語です。
正義を守り、外国の侵略から漢民族の社会を守るため、馬に乗り、酒を飲む武芸者集団である乞食団の団長に成長する。
チアオ・フォンはそのリーダーシップと卓越した武術の腕前で皆に愛されていたが、養父母と仲間の武術家たちを殺したという濡れ衣を着せられ、すべてが水の泡となる。
さらに悪いことに、彼は漢の宿敵である北東アジアの一族、契丹の一員であるとの濡れ衣も着せられてしまう。
武林を追われた彼は、かつての仲間たちに命を狙われながら、自分のルーツを探し始める。
その途中、彼は美しい阿朱と出会う。
これは今作品の最初の1時間に過ぎない。
エンディング・クレジットが流れるまで、観客はまだ残り約70分近く、聞きなれない人物たちの相関図を頭の中で描きつつ観続けなければならない。
今作品は間違いなく野心的な作品だが、何十人もの人物が次々と登場し、すべてがひどく混乱している。
ドニー・イェン監督でさえ、自分が巨大な作品を扱っていることに気づいていたはずやけど、ストーリーを2部に分けるのではなく、阮星珠(カーラ・ワイ・インホン/惠英紅)のような重要人物を残したまま、映画の第3幕を一気に駆け抜け、段正春(エディ・チャン・シウファイ/張兆輝)、阿紫(チャ・リュウ・ヤーセ/劉雅瑟)といった重要な登場人物を数分ずつしか登場させなかった。
原作に馴染みのない方は、今作品がどこに向かっているのか理解するのに頭を悩ませるかもしれない。
さらに残念なことに、今作品の色調は著しく損なわれており、格闘シーンでは薄暗い照明のせいで、複雑な振り付けを鑑賞するのが難しくなっている。
ドニー・イェンはまた、主人公の最高の仕事はフィナーレのために取っておくという映画作りのルールも忘れてしまったよう。
ここでは、喬峰は次から次へと戦闘で派手な武術の力を見せつけるので、最後の対決が行われる頃には、観客を驚かせるものは何も残っていない。ドニー・イェンは自分の映画に社会的な批評を入れるのが好きで、ここでもそうしている。
『イップ・マン』シリーズでは反アジア人種差別を扱っているし、今作品では喬峰は自分に落ち度はないのに追放者となる。
それは12世紀のキャンセルカルチャー(特定の人物や団体の反社会的言動を問題視し、集中的な批判や不買運動などによってその対象を表舞台から排除しようとする動き)。
残念なことに、ドニー・イェンはそれほど現代的ではない問題、つまり外国人嫌悪を見逃しているよう。
お作りになられた方々には悪いが、個人的には劇場まで足はこんで観るほどの作品ではなかったかな。
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