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ありふれた教室のQIのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.1
“学校の解剖学”

極上の心理スリラーを堪能

ある学校でおきた事件に対して、女性教師のとった行動が学校の秩序を崩壊させながらその教師をとことん追い詰めていくお話

そして事件の真相を明らかにすることが目的ではなく、そこに関わる人たちの心理描写を中心に描く点では『落下の解剖学』に近い味わい

内容も『落下…』と同じく、現代社会が抱える課題がてんこ盛り

そんな社会の縮図としての学校を描いた社会派スリラーとしてしっかりと作られたレベルの高い作品ですが、自分として大いに楽しんだのはそのストーリーテリングの妙

学校で起きた事件を描いた作品といって思い浮かべるのは『怪物』

いわゆる“羅生門効果”を使い、多角的視点で複数の物語が進んでいくそれに対して本作は全く違ったアプローチ

お話はただひたすら主人公の周りで起きる出来事を追い続けます

彼女が絡まないシーンはたぶん皆無だったハズ

さらにその舞台はワンシーンを除いて一歩も学校から出ません

限られた閉鎖的舞台での出来事を描くのにスタンダードサイズはとても効果的

余計な贅肉(情報)を極限まで削ぎ落としたストイックな、そして真面目な脚本と演出はいかにもドイツ映画🇩🇪って感じ

そんな必要最小限の情報の中で、唯一メタ的に登場するのがルービックキューブ

とりあえず一面を揃えるのは簡単だけど、その時他の面はメチャクチャ

全ての面を揃えるにはそのアルゴリズムをきちんと理解するだけでなく時間と経験が必要

それは主人公が良かれと思いその場でとりあえず?取る行動が、他人から見たらことごとく攻撃の対象になっていく様子と重なり…😥

そして主人公を演じたレオニー・ベネシュの演技がとにかく素晴らしい

さらに本作が日本でのデビュー作となるイルケル・チャタク監督にも要注目👀

こんな濃密なお話を99分の尺の中で描き切る手腕は只者ではない😲

はたして終始収まらないヒリヒリ感にどうオチをつけるのか?と思っていたところにまさかのルービックキューブに感じるカタルシス

…からのメンデルスゾーンをバックにしたインパクトあるラストシーンに感じる開放感😮‍💨

このお話が“真夏の夜の夢”であってほしかった😅

p.s.
主人公が対峙するキーマンとなる生徒の名前がオスカー

チャタク監督本気で狙ってた?w

まぁノミネートされただけでも素晴らしいことだと思います👏
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