Jun潤

18歳のおとなたちのJun潤のレビュー・感想・評価

18歳のおとなたち(2023年製作の映画)
3.8
2024.03.13

予告を見て気になった作品。
『リュウソウジャー』にてリュウソウゴールド役を務めた兵頭功海が主演。
2022年に成人年齢が18歳に引き下げられ、子供と大人の境界線が曖昧になってしまった若者たちが、成人式の実行委員として映画制作をした実話を基にしたお話。
青春ものっぽいですが、なにやらシンプルなものではない感じ、果たして。

暴力事件を起こして年少から出てきた成田誠は、教育委員会の山田菜摘から、「成人式の実行委員になってくれないか」と持ちかけられる。
成人年齢が引き下げられてから最初の年の成人式は18歳、19歳、20歳ごとに開催されることとなり、その内の18歳の部を担当することになった菜摘だったが、毎年成人式が荒れている上に18歳となるともっと荒れることが予想されたため、暴力には暴力で対処しようということで誠に白羽の矢が立った。
最初乗り気ではない誠だったが、1年前に母親と喧嘩別れして以降行く当てもなく、菜摘の家にあった昔夢中になっていた映画をもう一度見たことにより、映画制作ができるならと、実行委員を引き受ける。
誠は幼少期から映画監督を目指していて、小学生の頃から脚本を書いており、その時一緒に映画制作を目指していたカケルのことを思い出す。
しかしカケルはいじめられていたことや、ずっと一緒に映画制作を目指していた誠に裏切られたことをきっかけに引きこもっていた。
そんなカケルを部屋の外に連れ出し、誠は共に映画制作への情熱を再燃させる。
いざ映画制作開始、かと思いきや、経費に圧迫され映画制作の予算がほとんど無く、クラウドファンディングで資金を集めようにも目標金額には遠く及ばない。
そこで誠とカケルは、昔馴染みで現在はインフルエンサーとして注目を集めているスイを頼る。
何かを隠しているようなスイだったが、彼女の協力のおかげで予算と主演を確保でき、いよいよ映画の制作がスタートする。
しかし、そんな『18歳のおとなたち』の行く末を大人たちは優しく見守っていたり、時に厳しい現実を突きつけてきたり……。

「よーいスタート」で終わる映画があってもいいじゃないの。
今作を観て個人的に思い出すのは、ちょうど鑑賞日の二日前に『ゴジラ -1.0』にてオスカー視覚効果賞を受賞した山崎貴監督のこと。
監督の『ALWAYS 三丁目の夕日’64』の主題歌、BUMP OF CHICKENによる『グッドラック』のMVで描かれた監督の映画作りの原点。
それが今作でも描かれていたように感じました。
エンドロール後のシーンを観るに、きっと誠に送られるのは大歓声ではないものかもしれないけれど、誠というキャラクターも、誠のモデルになった人も、自分が制作した映画が世に出た経験というのが、もしかしたら本当にカンヌやアカデミー賞に繋がるかもしれない、いつか世界へ羽ばたいていくかもしれないという希望も含まれた作品でした。
作品的には、物語中に初の試みだからと記録用に回していた映像を使ってテンポの良さを引き出していたのも好印象です。

とはいえ気になった点も。
男たちのウィッグ、もうちょっとなんとかならんかったのかなぁ。
素人目線でも違和感ありありで、少しではないぐらい浮いて見えました。
あとアクション指導はもっとちゃんとしといて欲しかったよ……。
BGMの音量もですね。
場面に合わせて効果的に使われていた印象ですが、音楽のかけ終わるタイミング等に少しだけ違和感があり、もうちょっと自然な感じにして欲しかったところ。
映画のストーリーに現実の事情を挟むのは少々ナンセンスですが、荒れる成人式の抑止力になるような非行少年を探して、出所日に外で待ち伏せていたり、そろそろ大きな案件やってみようかぐらいのキャリアにしては、一人同居人が増えても平気な家に住んでいたり、初対面のカケルに過去のことを話させたりと、菜摘の無理矢理感というかご都合感というか、よく言えばバイタリティに溢れた行動が気になりました。

今作はちょうど前日に鑑賞した『ゴールド・ボーイ』にも通じる大人と子供の対立構造が大きなテーマとして掲げられていたように思います。
20歳になったからといってすぐに一人前になるわけでもないし、成人年齢が18歳に引き下げられても20歳までは酒やタバコについての制限がかかっているし、世間的に大人とされていてもダサいガキや卑怯なおじさんも描かれており、その狭間で揺れ動く誠たち4人がよく描かれていました。

あと成人年齢の引き下げは単なる物語の出発点程度にしか考えていませんでしたが、物語の中でもその描写を回収するような場面もありました。
大人の勝手な都合で成人年齢を20歳から18歳に引き下げたのに、いざ18歳の成人式で新しいことをやるとなると懐疑的になる役所の上司たちや、18歳でも契約を結べる権利があるのをいいことに判断能力が低い状態で不利益を被る契約を結ばせる悪徳業者など、作中に誠たちを縛り付ける仕掛けもあったからこそ、その縛りの中で精一杯映画制作に取り組む姿をより如実に描けていたんだと思います。

そして大人と子供という年齢の上下だけでなく、忘れてはならないのが親の存在と子供との関係。
大人だろうが子供だろうが親はいて、すぐ近くにいるかどうかも優しく見守っているかどうかも関係なく、存在そのものが希望や支えになっているのを描いていたことで、歳や大人だ子供だだけでは語りきれない人間性の部分も作中で出せていたと思います。
Jun潤

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