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名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)のよどるふのレビュー・感想・評価

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監督の永岡智佳さん、脚本の大倉崇裕さんコンビによるシリーズ作品としては、『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』以来。『紺青の拳』は「多数のゲストキャラクターがそれぞれ自分の欲望のままに動いている」という、長いシリーズの中でも新鮮な展開を見せてくれる作品だったが、今作はそんな群像劇としての要素を大幅に拡張。“宝の奪い合い”という明確な筋立てにミステリとラブコメが絡み、結果としてテンポが速く、密度の高い作品に仕上がっている。最後の最後に明かされる(途中でほのめかされてはいるが)事実も含めて満足のいく出来でした。

原作コミックスは100巻を数え、劇場版も本作で27作となる長期シリーズとなった『名探偵コナン』の現状の魅力を自分なりに短くまとまるならば、「巨悪に立ち向かう“志を同じくする者たち”による群像劇という主軸に、ミステリとラブコメが二重螺旋のように巻き付いている作品」。前作の劇場版『黒鉄の魚影(サブマリン)』は、まさにそんな“現状”を上手くまとめてみせた作品だった。今作でもそういった面を描きつつ、『まじっく快斗』や『YAIBA』のキャラクターたちが登場する「青山剛昌作品ユニバースの接合点」としての面も描かれている。これも年を経るごとに強まっている部分。

そういった作品がクロスオーバーしている面白さを十全に味わうにはかなりの知識量が要求されるが、話の大きな枠組みは、殺人と暗号の謎を解き明かすミステリと函館を舞台にした荒唐無稽なアクションだし、細かなキャラクターの因縁も記号的なリアクションやセリフでだいたい分かるようには作られている。前述した通り群像劇の面白さは『紺青の拳』を凌ぐ出来だと思うし、さらに謎解きパートのビジュアル的な美しさとロマンチックさは劇場版『名探偵コナン』に怪盗キッドが初登場した『世紀末の魔術師』を思い出した。永岡監督による『名探偵コナン』としてはこれがいちばん好き。
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