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ストップ・メイキング・センス 4Kレストアのtakのレビュー・感想・評価

4.2
トーキングヘッズを初めて知ったのは、1985年のアルバムLittle Creatures。名曲Road To Nowhereなど強烈な個性を感じるけれど、旧作を真剣に聴くほどハマったバンドではなかった。たぶん"ニューウェイブ"やら"ノーウェイブ"とカテゴライズされた音楽に、どうも苦手意識があったせいだと思うのだ。ちゃんと聴いてたのはメジャーなブロンディくらいで、アート・リンゼイとか坂本教授がいかに褒めても「わからん」としか思えなかった。トーキングヘッズもそんな流れで、デビッド・バーンの強烈な個性とパフォーマンスを当時の僕はカッコいいとは思えなかったのだ。

「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ監督がトーキングヘッズの1983年12月のコンサートを記録した映画「ストップ・メイキング・センス」。噂には聞いていたけど、苦手意識から避けていて、4Kレストアによる今回の再上映で初鑑賞。84年以前のトーキングヘッズはほぼ曲を知らないのが不安要素だったけど…

観てよかった!😆

普通のコンサートを記録した映画とは撮り方が全く違う。最後の方まで観客が映像に映ることがない。冒頭、ラジカセとアコギを持ったデビッド・バーンがステージに向かう足元から映画が始まる。アコギ一本のPsycho Killerから、曲ごとに一人一人メンバーが加わっていく演出。

通常、コンサート会場の臨場感を表現するために、映画は僕らを観客の一人にする。そのために前にいる聴衆の頭がフレームインしたり、踊り狂う人や歓声をあげる女の子が挿入されたり。そのアーティストがいかに観客を熱狂させているのかが描かれる。ライブエイドの完全再現がすごかった「ボヘミアン・ラプソディ」。クィーンを演じた人々は確かにすごいのだけれど、声出しオッケーの応援上映までしちゃうのは、あの場にいられたらいいのに!という気持ちがあるからだ。アーティストへの憧れと同時に、Radio GAGAで手を天に突き上げるオーディエンスの一人になりたい!という気持ちがあるのだ。

だけど本作はパフォーマンスを観ることだけに集中させてくれる。これ以上にない特等席に招待されたようなものだ。巧みな編集で、アイコンタクトを交わすメンバーたちの表情まで生き生きと捉えられている。デビッド・バーンの痙攣ダンスにこっちまで緊張させられるが、ティナ・ウェイマスの笑顔が挟まるだけでなんかほっこりしてしまうw。

ステージで起こっていることの全体像を見せる曲もあれば、演出過多のPVみたいにデビッド・バーンの芸を見せる曲もある。また、カメラがステージにいるのに、演奏する手元を過剰に撮らないのも印象的だった。演奏テクニックを見せつけるようなコンサートではないからだ。楽曲への理解があっての演出と言えるのでは。

観客の姿が見られるのはクライマックスとも言えるTake Me To The Riverのあたり。オリジナルの演奏はどこかおどろおどろしい感じすらある曲なのに、なんだこの盛り上がりは!😆♪。映画「コミットメンツ」でもパワフルなステージが印象的だった曲だが、このシーンの盛り上がりに、思わず立ち上がりそうになる。

繰り返し観たくなる気持ち、よーくわかりました。84年以前のトーキングヘッズ、ちゃんと聴きます!😆
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