みむさん

Vogter(原題)のみむさんのレビュー・感想・評価

Vogter(原題)(2024年製作の映画)
4.0
ベルリン国際映画祭にて。

面白かった。「THE GUILTY ギルティ」のグスタフ・モーラー監督、今回は刑務所ワン・シチュエーション・スリラー。
シセ・バベット・クヌッセン、ダール・サリム共演。
シセの母性感じる優しい看守から内に秘めた怒りをグッと堪え「何か」を待っている様子まで、演技の深さと広さはすばらしくて、主演俳優賞受賞でもよかったんじゃないかと思う(結果的に受賞は逃した)

デンマークの刑務所で犯罪者の更正を手助けする真面目な看守エヴァ。隣の凶悪犯収容棟に刑務所内殺人を犯したミッケルが移送されてきたことにより勤勉で真面目だった彼女の中の何かのスイッチが入る…!?

屈強な男性看守じゃないと勤まらない凶悪犯収容棟、さんざん止めておけと先輩看守に言われながらも頑として譲らず異動する。
案の定凶悪犯の暴行に対応するはめになりうんこ投げつけられたりと散々な目に遭うんだけど。

エヴァがなぜ看守になったのか、なぜそこまでして凶悪犯収容棟への異動を申し出たのか。わりと早めに明らかになる過去はそうだろうなと思ってもそこからの展開に釘付け。

「コヴェナント」で印象的だったダール・サリムはここでは屈強な先輩看守として登場、エヴァの行動に複雑な思いをいだく。

静かながら時折入る恐ろしい暴行や秘めた怒りが緊張感をずっと持続させる復讐劇。

罪と罰、道徳・正義・仕事人間の忠誠心と大切な人への思いの間で揺れまくり混乱しまくるエヴァの行く末……
強い怒りと強い愛が引き起こす行動と、人間とは思えない凶悪な蛮行が対峙するとか単純な話ではない。

原題は「看守」の意味だが英題は違う。なるほどな英タイトルなんだな。

ギルティとはうってかわって社会派ドラマかと事前に予想したが、やっぱり閉塞的でスリラー要素が強い映画で大満足。

今後もグスタフ・モーラーに注目していきたい。