ビリー・ワイルダー監督「悲愁(Fedora)」がよかったので見た。ウィリアム・ホールデンは貧しさと失意が若さの表層を削ぎ取り、苦悩に磨かれ燻銀の味わい。
取り立て屋の追求を逃れ迷い込んだ朽ちかけた館は、所狭しと飾られる豪華な家具や調度品で溢れている。物憂げな濃い化粧に派手なドレス、宝石に包まれた大女優は奇行ときつい眼差しの中に寂しさを隠している。
彼女があんなことをしたのは愛していたからじゃなく手放すくらいなら壊そうとした。
集まった記者たちの前でポーズをとる様子はまるでディズニー映画の悪い魔女のように哀れで滑稽。(ディズニー映画が彼女を真似したのか?)
館の壁面の、巨大な絵画に隠されたスクリーンに映る若い頃の彼女の横顔。蠟燭の灯りにほのかに浮かび上がる白い頬と澄んだ眼差が美しかった。