チッコーネ

影なき淫獣のチッコーネのレビュー・感想・評価

影なき淫獣(1973年製作の映画)
3.7
もっとスラッシャー寄りかと後回しにしていたが「そんな要素もある」といった程度でほぼジャッロ、製作は御大カルロ・ポンティ。
前半と後半ではロケーションの異なる作品で、何人かの犯人候補が一人ずつ消えていく構成。
個人的にはペルージャの学生街を舞台にした前半の方が、画面の密度が濃くて面白かった。
特に女子大生が叔父と住むマンションの美術は、強力。

また反体制的なヒッピー文化の雰囲気が取り入れられており、警察の阿りやラリパッパなオージーを表現する場面も。
まとわる男たちを振り捨て白樺の森へ進む女子大生が、犬神佐清のような覆面を被った猟奇犯に遭遇する青みがかった場面は撮影が幽玄、泥水に向かいうつ伏せとなる女優の頑張りもすごい…、殺害の完遂と共に、犯人の一人称目線でキッと上向くカメラが印象的だった。

ラッファエロの師匠・ペルジーノの妖艶なセバスチャンを批判する講義場面があったりして「ふ~ん。私は好きだけど」と思ったりもしたが、そうしたアカデミズム要素がサラリと入っているところも楽しい。