猫脳髄

影なき淫獣の猫脳髄のレビュー・感想・評価

影なき淫獣(1973年製作の映画)
3.6
初セルジオ・マルティーノ。多彩なフィルモグラフィーが実にイタリアの職人監督らしいが、本作はマリオ・バーヴァが「血みどろの入江」(1970)で確立したスラッシャー・ジャッロのサブジャンルを受け継いだ初期の事例にあたる。

ペルージャで美術史を学ぶアメリカ人、スージー・ケンドール(ちょっとイナタいよね(※1))が正体不明の犯人による連続殺人に巻き込まれるという正調ジャッロである。そこに血みどろの殺害シーンと、ロマンポルノかと思わせるほど頻出するお色気シーンとを加味して、フーダニットを取っ払えば、スラッシャー映画の様式(※2)をほぼ整えつつあるという点で特筆すべき作品である。

クライマックスの山荘を舞台に、たっぷり30分程度を犯人とケンドールのいたちごっこでサスペンスを盛り上げる(※3)。ナメの構図を多用しているのも面白い。ただ、絞殺からのナイフ等を用いた人体破壊表現については、特殊メイク技術がまだ未熟なせいか、一瞬のカットインでお茶を濁してしまうのは残念である(※4)。

なお、トリヴィアではあるが、アメリカ公開にはグラインドハウスやドライブインシアターで「悪魔のいけにえ」(1974)と2本立てだったらしい。予期せぬマリアージュで感慨深い。

※1 副主人公格のティナ・オーモンの方が印象に残る
※2 「霧の向こう側に佇む人影」という表現はもしかすると本作が最初期の事例なのではないか?バーヴァとかやってそうなイメージあるが…
※3 動機をベラベラしゃべってしまう「火サス」的犯人はいただけない
※4 一度頭部がペチャンコ(人形)になった被害者が、次のカットで元に戻っているという失策もある
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