ChernoAlpha

恋するトマトのChernoAlphaのネタバレレビュー・内容・結末

恋するトマト(2005年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

ネットで薦められていたので観たけれども、結局よくわからなかった。

ストーリーはある。

両親と農家を営む独身男性がフィリピンで結婚詐欺に遭い、絶望して現地で無一文になるが裏稼業に手を染めてそこからのし上がる。その後、フィリピンで知り合った女性と恋に落ち、彼女の家業である農業を手伝う。紆余曲折あり、彼女の父親に結婚の許しを乞うが許可をもらえず傷心のまま2年ぶりに日本に戻り実家の農業を再開させる。そこにやはり主人公のことを忘れられないフィリピン女性が訪ねてきてハッピーエンドで物語が終わる。

……とても平凡な物語。

結局大きなどんでん返しもないまま物語は思った通りの方向に進んでいく。観客を裏切ることもないし、観客の想像を上回ることもない。

以下、思ったことメモ

・トマトって?
タイトルは「恋するトマト」。確かにトマトをフィリピンで育てて最後にはたくさんの実をつけるこのができて栽培に成功するが、前半にトマトの話が出てきていない(気がする)のでキーワード、キーポイントになってない。前半はスイカにクローズアップしてたよね。スイカが日本で、トマトがフィリピン? 何かのメタファーなのか。あと、野菜の種を海外に勝手に持ち出していいのかな?(細かい)

・演技
物語の後半はフィリピンが舞台で、セリフのほとんどが片言の英語になる。そのためか大地康雄の演技になかなか感情移入できない。名優なので良い表情、良い動きをするんだけど、カタコト英語で吹っ飛んでしまう。さらには現地人俳優の演技もうまいのか下手なのかよくわからなかった。セリフの意味は分かる。物語がどう流れているかも分かる。でも感情が全然動かされない。

・バックグラウンドがもっと欲しい
日本にフィリピン女性を斡旋する仕事をクリスが毛嫌いしており、主人公に「ウソツキ!ニホンジン!」と罵るところはおそらく物語のピークの1つなんだろう。ただ、なぜそこまで激情するのかという背景をもっと描く必要があったのでは?と思った。例えばクリスにそうした過去があったからとか、友人が被害に遭ったからとか。「働いているカフェでよく見る光景だった」というのは描かれているが、あそこまでの激情とは釣り合わない気がする。お父さんが戦争のことに関連させて「日本人は……」というセリフもあったけど、それでも足りない。

クリスの弟が主人公に懐いているのも、もう少し背景が欲しかったかな。一緒に水遊びしているシーンだけでは描き切れてないと思った。弟が涙ながらに「姉と結婚して欲しい」(意訳)とつぶやくのは違和感があった。

まあ、こういう背景を描いていると、あっという間に上映時間が2時間を超えてしまうんだろうけど。観ながら「ん?」と思うシーンが多々あったのは事実。

・主人公の考えが分からない
→「家族総出で、さらに近所の人にも手伝ってもらってやっと稲刈りができる」(クリス)と言ってるぐらい農作業が大変だということが分かっているのに、どうして主人公は「娘さんをお嫁にください。一緒に日本で農業をします」ってお父さんに言えるのかなぁ。娘を連れて行ったらフィリピンの家族が破綻するでしょうに。

→その申し出を断る父親に対して札束を差し出す主人公の行動もさらによく分からない。そういう女性斡旋業者みたいな行動はクリスが最も嫌がることは分かっているはずなのに。必死だったから?

・結局フィリピンの家族はどうなる
物語の最後でクリスは日本にやってくるが、フィリピンの家族はどうなってしまうのだろうかと思った。「トマトの栽培が成功したから」「弟も学校に通うことができたから(親の後を継げる)」ということなんだろうけど、そこも説明が足りない気がした。豊作のトマトを皆で収穫するシーンはあるし、大きいトマトが高価だというセリフはあれど納得度は足りず、不安は残る。

・不要な雷雨
映画での雷雨はたいていは「不吉なこと」の訪れを表す。雷雨のシーンでお父さんのガンが再発したのか、誰かが事故に遭ったのか、などと思ったが何もなかった。若い医師がクリスの家を訪ね、結婚(交際?)の意思を示すことにつながるんだけど、雷雨にするまでのことかなぁ。

・ラストシーン
最後の最後でのスローモーションはかなり古臭さを感じる演出。やりたかったのかな。それはいいとしても、駆け寄る2人が抱き合わないまま(寸前で)映画が終わるのも不完全燃焼だった。
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