真鍋新一

ネオン警察 ジャックの刺青の真鍋新一のレビュー・感想・評価

3.7
映画業界全体の落ち目でエロとバイオレンスを取り入れざるを得なくなった頃の日活ニューアクション。生々しい色欲と暴力が渦巻くなかで、かつての風来坊ヒーローはいったいどうやって活路を見出し、生き抜いていくのだろうか? 小林旭という俳優自身のテーマと覚悟が感じられた。

ポーカーの勝負や、黒幕を前にしての大博打など、以前のアキラであれば神がかり的な奇跡を起こして勝ってきたはずの場面で、ことごとく敗北し無残な姿をさらすので驚いた。それまでの常識がまったく通用しないこの世界でアキラならどうする? 苦渋の選択を繰り返しながらもどうにか己を貫き、何度でも立ち上がるその男気の美しさには感動さえおぼえた。

たしかに今回のアキラは無精髭だし、服は薄汚れているし、髪型はチリチリパーマで、明らかに見た目をわざと悪く見せている。ダーティーなイメージを打ち出した意気込みはよかったが、撮り方が平坦なせいで中年の痛々しさが見えてしまっていたのか残念。これはなにをやってもアキラはアキラという宿命でもある。

殺伐とした抗争のなかにあっても「腹こわすなよ」「風邪ひくなよ」とさりげなく互いを気遣い合うアキラと郷鍈治の関係はかつてのさわやかな日活映画の片鱗を残すもので、この良心でどこまで現実と戦えるかの映画でもあった。

言葉少なげに殺戮を繰り返す男・安岡力也のアナーキーさと、過去の栄光となってしまった日活アクションへの厳しいエールともいえる筋書きは、脚本の大和屋竺の愛ではないかと思う。やはり同じく組織の末端である真理アンヌと混血同士で殺し殺される関係となる不条理さもこの時期の映画にしかないもので、きっとそれが時代の気分というやつなのだろう。

ところで、真理アンヌが劇中ラブホで寝ているブランコみたいなキコキコ揺れるベッド。ありゃ30分ももたずに三半規管をやられてしまうよ。絶対寝れない。
真鍋新一

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