【三根梓を見る映画】
名画座を舞台にしたちょっと不思議な感触の作品です。と同時に、この映画がデビューという三根梓のための映画でもある。
首都圏や関西圏ならいざ知らず、地方都市の名画座って今どき経営はほぼ成り立たなくなっていると思うんですが、そういう現実的な話は措いておいて、メルヒェンチックな雰囲気のある名画座という舞台を楽しむこと。それがこの映画をフィクションとして味わうための大前提。
この設定にプラスになっているのが支配人役の井上順。こういう経営者って実際にいるかなあという疑問もないわけじゃないが、終始にこにこしていて、糞リアリズム的な貧乏臭さがなくて、メルヒェンとしての舞台を支える役にぴったりです。この配役は褒めるべきでしょうね。
映像技師として仕事をしつつも、この映画館に籠もりきりになっている女の子。それが三根梓です。彼女、なかなか魅力的ですね。役としてはちょっと意表を突いていますが、悪くない。ただ、彼女の魅力を映像が十二分に捉えているかどうかは疑問。アングルや光の当て方などでもっと執拗に彼女を捉える努力をしてほしい。この映画の鍵は彼女なんですから。
対する西島くんも、相変わらずどこか頼りない印象ですけど、ヒロインの設定がちょっと変わっているからこれでもいいのかな、とも。ただし、最後はいけない。彼女を守ると大見得を切っているのに、あっさりダウン。男なら相手の足に噛み付いてでも頑張らなきゃ。筋書きがご都合主義的に展開したからいいけど、ふつうならあのあと悲劇になるところですよ。
三根梓と高良健吾をめぐるストーリーは、少しくありきたりだし物足りないですね。作品のラストと並んで減点材料。
評価は、三根梓さんの門出を祝しつつ今後にも期待して、若干甘めに。