木蘭

恍惚の木蘭のネタバレレビュー・内容・結末

恍惚(2003年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

 豪華メンバーで描かれるパリのフランス女はお洒落で面倒臭くも気高いというサスペンス・・・と観た直後は思ったのだが、よく考えたら・・・プロの娼婦が良い仕事をした・・・というビターな話だと思い直した。

 物語を語る事と、それに向き合う事の豊かさの話だとも思ったのだが、少し違った。
 話の骨格は娼婦の語る嘘・・・つまり作り話が胆になる訳だが、魅力的な物語は魔物となって、語り部の意図を越えて加速する。つまり物語(嘘)は、語り部の願望や承認欲求を織り込みながら成長する・・・盛ってしまうものだ。
 そこに聞き手が無意識に望んでいた"真実"があれば魅入られてしまうし、逆に物語と真剣に向き合う行為は(無論、映画を観る事も)、自分を見つめ直し生まれ変わる作業なので、聞き手は変化する。それに併せて語り部が寄り添えば、物語も変化し膨らんでいく。

 物語が語り部と聞き手の相互作用で成長出来れば、お互いを豊かにする。
 ここでは物語(嘘)は良い結果をもたらして、ヒロインは娼婦の話を聞き心乱れながらも変化し、夫婦の絆を取り戻すハッピーエンド・・・だが、それはヒロインの視点でしか無い。

 一方の娼婦はただ相手が喜び、都合の良い物語を語っていたに過ぎない。擬似的な友愛関係を演出し、出来るだけ長く多く金を巻き上げ、ハッピーな気分にして送り出す。SEXをしないだけで、いつもの仕事と変わりない。
 だから彼女の人生は、この物語では何も変わらない・・・最後のエマニエル・ベアールの虚無的な目が象徴する様に。
 ヒロインは、あのクラブのウブな客の一人でしか無かった訳だ。


 デッカいフラン紙幣だとか、やけに細い煙草をヒロインたちが頻繁にスパスパやる姿、ハンス・ナイマンの音楽に時代を感じる。

 ちょっとヒロイン2人の表情が乏しいのが気になった。演出だったのか、顔が動かない事情があったのか・・・。
 しかし、エマニエル・ベアール・・・20代後半ぐらいの雰囲気の役だけど、この時40歳か。
木蘭

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