tak

ライフ・オン・ザ・ロングボードのtakのレビュー・感想・評価

3.7
好きなことを新たに始めたり、楽しんだりに、早いも遅いもない。そしてそれを通じて人は成長することができる。いくつになっても。日々これでいいのかな、なんてふと考えてしまう僕らに勇気をくれる素敵な作品だ。2018年に亡くなった大杉漣。冴えないけれど懸命な主人公が次第に変わっていく姿が心に残る。

55歳で長年勤めた会社を退職した主人公米倉一雄。特にしたいこともなかった一雄だったが、海を眺めていて、若い頃サーフィンを始めようとして失敗した時を振り返る。そして亡き妻が言った言葉を思い出す。
「カッコよかったのになあ」
一雄は種子島でサーフィンを始めることを決意する。55歳でよそ者の初心者を最初は笑うのだが、当の本人は日々現地の若者や一目置かれる名サーファーに教えてもらうのが楽しくて仕方ない。そこへ妻の死後関係がギクシャクしていた娘がやってくる。

島での日々を通じて、一雄も娘の優もこれまで言えなかった気持ちや出せなかった自分と向き合うことになる。その様子を多くの人はベタと言うのかもしれないけど、僕は素直に感動できた。自分が退職の時期を迎えたら、何をしようと考えるのだろう。それほど遠い将来ではないけれど、幸いなことに好きなことだけはたくさんあるからな。

サーフィン場面はともかく、種子島の風景にビーチボーイズの名曲が似合うなんて思いもしなかった。走り去る軽トラに重なるAll Summer Longに、なんか感激。「アメリカン・グラフィティ」のラストでこの曲が流れる時、ひとつの時代の終わりを感じたが、この映画では新たな始まりの曲なんだもの。
tak

tak