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闇の中の魑魅魍魎のmokamancoのレビュー・感想・評価

闇の中の魑魅魍魎(1971年製作の映画)
5.0
幕末土佐の若き異端の絵師・金蔵の壮絶な半生。金蔵は、人々からきちがいと罵られていたが、母の強い薦めで江戸へ遊学し、絵を学び始める。しかし保守的な狩野派に失望し、金蔵自身も堕落する。三年後、金蔵は土佐に帰郷するが、そこでは既に革新運動が動き始めていた。状況劇場の麿赤児が金蔵を怪演し、中平康が自ら独立プロを興して撮った一本。


なんの期待もしてかなかったんだけど素晴らしい映画でした。満腹!
キャスティングが完璧で、特に麿赤児、扇ひろ子が素晴らしい。
造形的に特に美人でもないのに、扇ひろ子が凛として美しく撮られている
(とても演歌歌手には見えません。)
これ、役者もいいけど、本がいいんだな。セリフとか深くていちいち「おー」って思わされる
って思ったら脚本新藤兼人。
ちょうど読んでる著書に「わたしは男と女のやむにやまれぬ心を描いた傑作に惹かれる。なかでも近松門左衛門の「冥途の飛脚」が素晴らしい」とあって、この映画もまさしく「恋をする女に罪を犯してでも傾倒したい」という男のやむにやまれる気持ちが描かれている。
女郎屋に売られた雪を娶るため、偽絵を描いて金を作るんだけど、「銭のために偽絵を描いてはいけませぬ!」って、雪は首を掻っ切って自害しちゃうんだよね。やっと夫婦になったばかりだというのに。
その直前のお互いに首をつかみあって、床をゴロゴロ転がりながらする喧嘩がいいのよ。
お互いがお互いに対する愛を吐きながら喧嘩すんだよ。
こういう喧嘩をしなさいよ!と天安門、恋人たちの人たちに言いたくなるよね。まったく対極。
絵描きの映画というと先日見た「序の舞」を思い出すけど、あの名取裕子と同じように、最後麿赤児は人生を描いて「完」
あたし、こういうまっつぐに人間を描いている映画が好きだわ。

土佐に行ったら絵金蔵の絵を見に行きたいなあ。
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