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戦艦ポチョムキンのmochiのレビュー・感想・評価

戦艦ポチョムキン(1925年製作の映画)
4.3
エイゼンシュテインの代表作。今まで観た無声映画で一番良かった。無声映画ならではの音楽の使い方が素晴らしい。「英雄ポロネーズ」が流れるが英雄はいない。「展覧会の絵」のプロムナードが流れるが、展覧会の華やかさは存在しない。むしろ名もなき市民が英雄であり、泥臭い人々の情景が展覧されるべき作品なのだ。
やはり1番の見どころはかの有名な「オデッサの階段」。無声映画でこれほど感情がストレートに、生々しく伝わってきたことはなかった。
また、カットの使い方もすごい。一つのシークエンスにおいて、様々なシーンを繋ぐためにカットは用いられるが、エイゼンシュテインは一つのシーンの中で細かくカットを用いており、これがリズム感を生む。のちにゴダールが「勝手にしやがれ」で用いた方法の萌芽がすでにある。
そして、最も素晴らしいのは緊張感。カットの移り変わりを用いて、同じ時点での「人」と「もの」を交互に見せることで、なんとも言えない緊張感がある。ラスト10分が特にそうである。
プロパガンダであることは疑いようがない。ラストがあのようになっているのもプロパガンダだからであると思う。しかし、プロパガンダに用いられた芸術は普通死んでいくのに対し、その中で発展を遂げている点は評価に値する。素晴らしい古典だった。
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