りょう

エスターのりょうのレビュー・感想・評価

エスター(2009年製作の映画)
3.8
 このポスタービジュアルがB級ホラーとしか思えなかったので、当時はまったく興味ありませんでした。意外と評判がいいらしく、「まさか同一キャストで続編」なんていうニュースもあって、いつか観てみようと思っていました。せっかくなので、前日談である続編から観ることもできましたが、まずはこちらからということに…。
 とても丁寧な脚本と演出で、中盤まではよくできたサスペンス・スリラーだと思いました。終盤にエスターの正体が判明し、それまでの彼女の言動とかに納得感を得てからは、なかなかの秀作だったという印象です。エスターを演じたイザベル・ファーマンの表情は、狙って不気味そうでもないのに、前後の文脈でなんとなく不穏な雰囲気にしてしまうところに感心しました。正体がバレてからの形相は、メイクの技術もあるのでしょうが、およそ子役が演じているとは思えません。
 ただ、素性のわからない子どもの養子を斡旋してしまうアメリカの孤児院とか、片腕を骨折したばかりなのに簡易なギブスだけで次々と悪行をはたらくエスターとか、ちょっとツッコミどころも少なくありません。
 エスターの境遇を想えば、狂暴な性格には原因があったとしても、もう一つの特性で本来のパーソナリティを実現できない弱者であったのだから、やっぱり可哀そうです。社会的に救済されるべきはずだったのに、その措置が彼女の特性とマッチしなかったのなら、とても残念なことだし、実際の社会にはそういう人たちがたくさんいるのだろうと想像します。
 この作品にそういうメッセージがあったのかどうかわかりませんが、彼女の前日談として続編が制作されたということは、とても興味深いです。ケイトの最後のセリフ“I'm not your fuckin' mother”は、2002年の「ザ・リング」でナオミ・ワッツが演じたレイチェルの最後のセリフと一緒かもしれません。
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